カメキチの目

2006年7月10日が運命の分かれ道、障害者に、同時に胃ガンで胃全摘出、なおかつしぶとく生きています

2018.1.18 友

 

まったく個人的な話ですみません。

「備忘録」として残しておきたいと思い、記事にしました。

 

この7日のこと。二人しかいない「親友」のひとりが亡くなっていたことを、彼の弟さんのお嫁さんの手紙で突然、知ることになった。

彼は、慕って同居(というより居候)していたお姉さんが亡くなり、四十九日法要を無事にすませたあと、お姉さんを追うかのように亡くなった。

歳が離れた姉であり、子どものときから母親のように慕っていたという話を本人から聞いた覚えがある(亡くなられたときはもう80近かったのじゃないだろうか)。

彼の死んだ日は正確にはわからない。「お姉さんを追うかのように」だけ。お姉さんの四十九日法要後しばらくしてということだけ。

姉が死んでひとり身になった彼を気遣ったお兄さんが(とても遠いところにいるので)世話になっている寺の住職さんに様子を見てきてほしいと頼まれ、その住職さんからの依頼を受けた警察が、すでに亡くなり、何日かたっている彼を発見したとのこと。

 

昨年の(私からの)年賀状はたぶん読んだだろう。

「読む」といっても、私は「君のことはいつも胸に生きている。忘れていないよ」という意味のことしか書いていないし、いつもと同じ内容だ。

彼は長いあいだ精神を病んでいることがあった(ひどいときもそうでないときもある。私が身体に障害を負う前には会ったこともある。障害者になってもしばらくはメールのやり取りもした)。

だが、この7、8年はずっとダメで、一方的な年賀だけの「つき合い」で、もちろん賀状の返事もなかった。ないのが「生きている証拠」と受けとっていた。

 

この正月。受け取り手のいない私からの賀状が、遠く離れた弟さんの目に触れ、報せようということになったのだろう。

 

 人生にはいくつも大きな、「決定的」ともいえる出来事、出あいがあると思う。

 いくつもあるが、最初のそれほど強くて深いものはない気がする。

(なぜなら、最初の選択は以降の自分の人生のこれからのすべてを決定づけるだけの重みがあると思うから)

少なくとも私にとってはそうでした。

 

その親友(もちろんそのときは、ただの友だちだった)との出あいは、今ある自分を、よきにつけ悪しきにつけ、形づくった。 

 

 まだ、初々しい(私にも「紅顔可憐」な時代があった)17、18のころ、彼に学生寮(全寮制の学校)の屋上に呼びだされ、「ベトナムで多くの人々がアメリカ兵に殺されている。(当時は「ベトナム戦争」がありました)オマエはどう思う…」という意味のことを言われた。

どう思うとは言われても…(そのとき何と言い返したのか、それともただ赤くなって黙っていただけだったのか覚えていません)。

ほとんど考えたことのないような「社会」とか「国」。「戦争」(「戦争」といえばテレビで人気のあったアメリカの戦争ドラマ『コンバット』、ゼロ戦や「回天」と命名された潜航艇などの悲劇を描いた特攻隊ものの映画くらい)。

 その後、校則を破りデモに参加したり、いろいろやった(そばにはたいてい彼がいた)バカみたいな行動、幼い振るまいだった。

「個人的な不都合」には目をつぶり、「社会の不合理」ばかり目に映っていた(あとでは反省することいっぱい)。

先日、元日放送された人気テレビ『相棒』をみました。最後に主人公右京さんがこういう意味のことをしゃべるんです。「現実は社会的に力がある者が言うことが「正義」としてまかりとおっていても、君(内閣情報局の幹部のような官僚・その部下に脅迫された若者。彼はひどく憤ってその官僚を盗んだ拳銃で殺そうとする)は、力がなくても「正義」は存在することを信じてほしい…」と。私も右京さんのような人(警察官でなくていい)に出あいたかった。

 

 それから私たちはオトナになった。

 社会に合わせねばならず、「妥協」を覚えた。「面従腹背」「反面教師」も覚えた。ずるく振るまうことも覚えた。

 覚えるだけでなく実行もした。

 

オトナになると彼とは別々の社会生活にはいったので30年以上あうこともありませんでした。その知らない間に彼の身には何か重大な出来事があり、精神を病むことになった。

50をとうに過ぎて会ったとき、どれほど嬉しかったことだろう。そのときは精神が不安定ながらも旧交を温めあうことができたのです。

ところが、私が障害者になる前には死地を求めて日本各地を放浪することがあったし、四国88カ所巡礼参りを二度も歩き通すということがありました。

そのご精神は安定、不安定の波を繰りかえしながらも故郷のお姉さんのところに落ち着いていたのでした。

 

 あたり前だけど、人の一生はフシギ。

 そして、 あたり前だけど、人生はいろいろ。

 

              

                 ちりとてちん

 

 

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