♭ おたずねくださり、ありがとうございます ♯
(人目の方)
そういえば、“ビ”。“美しい”というのは、言いかえれば、一種の“お気に入り”みたいなもんではないか。つまり、好みである。
と、私は考えた。
妻はキラキラするモノ(物=ブツ)が好きだ。
しかし、指輪は持っていない。私が贈らなかったからである(エラそうに言うな!)。結婚当初から低所得者であったので、結婚指輪なんて思いもしなかった。
後年、「欲しかった」と聞くと、映画『三丁目の夕日』の主人公のように、カラでいいから宝石箱だけでも贈ればよかったな。
それはいいが、彼女は自分の机のまわりや寝床にそういうキラキラ(誕生プレゼントに娘からもらった、光をはね返し虹を振りまくガラス玉もその一つ)を飾り、とても満足そうに眺めている。キラキラだけでなく、100円ショップで買った“お気に入り”もいろいろある。
それらのどれもが、「買って、買って…」と呼びかけてきたと言う。モノなのにしゃべったらしい。そういうおとぎ話みたいなことをまじめに言う。見あげたものだ。
残念なことに、私に「買って買って」はまだ現れ出ない(心の声に静かに耳を傾けていよう)。
が、世界は美しいと感じることはある。