カメキチの目
第1章 身体を“改造”すれば幸せに?
■記憶を変えるという”医療”
■もっと幸せなからだに
■エンハンスメントの欲望の行方
■再生医療でからだを「取り換える」
■遺伝子から人をつくり変える
■より強く、より有能に、より幸せに
■治療を超えた医療へ
■「より望ましい子ども」を求めて
■落ち着かない子を落ち着かせる方法
■薬物は「からだに悪い」からよくない?
■どこで線を引いたらよい?
■「長寿を望む」ことが実現する社会は?
■心を変える医療
■落ち込みがちな気分は薬で簡単に
■「すべりやすい坂」の入り口で
第1章のいちばん初めは、⑤で書いた■記憶を変える…だったのですが、その次に14節が控えています。
■記憶を変える…ようにそれぞれがたいせつですが、今回は残り14項目をまとめて書きます。我流なのでうまくはいきませんが、お許しください。
この本を読んで私は、「原点」というものに、常に立ち返るべきことのたいせつさを痛感した。
「現象」はいちばんわかりやすい。とっつきやすいですから。「便利」もそうなんでしょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
みなさんは「エンハンスメント」という言葉をご存じだろうか?私は知りませんでした。
「エンハンスメント」とは「増強」「増進的介入」ということ。
「医療」の目的は、公衆衛生のように予防面とともに、「治療」にある。
ところが現在のバイオ・テクノジー、生命工学の目覚ましい進歩・発展は、「治療」を超えようとしている。「エンハンスメント」というべき領域に足を突っ込もうとしている。
人間は、いつの間にか神になろうとしている。
いや、「美容整形」のようにすでに超えた医療もあるそうです。
もっと幸せなからだに…。ということのようですが、もっと「美人に」もっと「イケメンに」。
人間の欲望にキリはないので、そのうち「もっと背が高くなりたい」「もっと美声を発したい」「カッコよく…」が加わり、ダンスが踊れるようなスタミナも…と、とどまるところなしとなりそうです。
「一億総活躍」ならぬ「一億総美人&イケメン」。
著者は、放っておけば、そういう「エンハンスメント」の欲望が際限なく拡がっていき、際限なく進むことを危惧する。
たとえば再生医療でからだを「取り換え」、遺伝子から人をつくり変え、より強く・より有能に・より幸せになる。
どこかの臓器が病気となり、不調となったら、自分に由来する(そうでなくては拒絶反応を起こす問題がある)万能細胞をマウスか何かの生き物を借りて増殖し、その細胞が育ったモノを自分に移植する、患部を「治す」のではないのです。
「クローン羊のドリー」の段階では、羊に人間の遺伝子を組み込んで人間のタンパク質を含んだミルクを出す羊を無限(コピー、クローン)につくり、そのミルクを売って大儲けしようというイギリスのベンチャー企業が考えたことでしたが、理論的には羊にできることが人間にできないわけはなく、目覚ましい遺伝子工学の進歩は、いずれ(いまは、私も前にこのブログで触れた「遺伝子治療」に限定されて行われていますが)優れた(?)遺伝子を研究・開発し、あるいは現実に存在しているほかの人の優れた遺伝子を組み込んだ「人間改造」につながらないとはいえません。
「人造人間」が内側から、「ロボット人間」は外側からの、ともに創造された未来の「新人類」(揶揄としてではなく、これこそほんとうの)でしょうね。これはブラックジョークではありません。
そして、あくなき欲は、自分より優れた「より望ましい子ども」を求める。子どもに、自分では実現できなかった「夢」を託せる。
しかし、「より望ましい子ども」を求めても、子どもは子ども。必ずしも親やおとなの言う通りにはならない。そういうときには、落ち着かない子を落ち着かせる薬を用いればよい。
薬物は「からだに悪い」からよくないというのも禁止理由の一つで、かのオリンピックでもドーピングが問題になったが、それを言うなら「からだに悪くない」薬を開発、創薬すればいい。マラソンとか競歩のようにシンプルな競技は別にしても、筋力トレーニングや高地に早く慣れるために現地トレーニングができるなど裕福な国と貧乏な国は、出発点から差があります。
同じ日本国に生まれても、はじめから格差を与えられて育っていかなければならない子どもたちもいっしょなんですね。
おしなべて人類の寿命は延びているようだが、「長寿を望む」ことが実現する社会はくるのだろうか。
ハテナ?「長寿」とは100をいうのか、110くらいをいうのかな。
そんなに長生きするのは幸せなのかな。
まてよ。「アンチ・エイジング」の手があったか。
そうか! 「アンチ・エイジング」も未来社会では発達を遂げ、お年寄りも健康体でコンドロイチン・グルコサミン・コラーゲンを持続的に摂取せんでもいいのでしょうか。それらに代わる健康物質が開発されたいるかも知れませんね。しかもシワ、シミなしの美顔ときているか。
心を変える医療は⑤で述べた通り。
落ち込みがちな気分は薬で簡単にハイになればいいのかな。もちろん、それは未来の薬だから、生物学的・化学的副作用といったマイナス面はいっさいない。
ウン悪くブラック企業に勤め、ブラックでなくとも働きすぎや休みなしなどで、過労死になるほど追い込まれても、ユーウツになっても、気分が沈んでも、職場を人間らしく、働きやすいように変えようとしてはならない。明るくさわやかな気分になれる薬がある。
ああ~、メンドクサァ~! 人間はなんとも面倒くさいものだ。考えるのも思うのもイヤになった…
そこが、「悪魔」の狙いだろうか。人間はまだ「神」になってはいないので「悪魔」は健在なのだ。