という新書を読みました。
とてもよかった!
41歳という若い年齢で「脳梗塞」を体験した著者。
仕事は本を書いたり雑誌に寄稿する記者です。
苦痛・不快な症状を改善し、仕事に復帰できるまで「ほぼ99%」
(ご自身の言葉)回復するに至った具体的な体験記にとどまらず、さまざまな
ところ(図書・文献だけでなく信頼できる医療関係者や実績のある支援機関など)
から知見を求め、それらを明快でわかりやすい文章で伝えられる。
「脳は回復する」(多くの国民に読まれればいいと思った)
もちろん一口に脳梗塞といっても、脳の血管がつまった部位が個人により違うし、
軽重の差があります。
鈴木さんは軽い方だったのですが、症状が重くて「99%」は回復できなくても
この本から学ぶことは100%を超えると私は感じました。
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この本はツレが図書館で借りたもので軽い気もちで読みはじめた。
私が脳に外傷を負って障害者となり14年になるので、いまさら回復を期待して
いるのではなかろうが、この手の本をよく見つけてきては読む。
脳の損傷は、外から受けるもの以上に内からのものが多いのではないか。
それに、脳機能の衰えは加齢とともに(程度の差こそあれ)誰にも訪れる。
誰にも無関係な話ではない。
ところで、
障害者になっても生きていかなくてはならない。
生活を続けなければならない。
(私の場合は55で、まだ働かなければならなかった。入院中に障害が遺ると
わかったとき、転職先は野菜を洗うような仕事の共同作業所がいいと思った
ことがある。なぜかよく覚えている)
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本は全部がおもしろく、ためになりました。
で、私の力量ではとてもうまくまとめられませんし、紹介というわけにはいかない
ので著者による「あとがき」を引用させていただき、その後いちばん印象に残った
ことを二つだけ書きます。
■ 本のあとがき
【引用】
本書に書かれていることをざっくり整理すると、こうなる。
●其の一
脳卒中を起因とする高次脳機能障害に加え、鬱病・統合失調症・双極性障害・PTSD
離人症・解離性人格障害・適応障害・パニック障害などの精神疾患カテゴリーの
数々の障害、そして発達障害、認知症、薬物依存症などなど、とても書ききれた
ものではないが、これらはいずれも高次な脳機能が不全をきたすという点で、
当事者がやれなくなることや、抱える苦しさに大きな共通点がある。
●其の二
こうした高次な脳機能障害者の全体を示す横断的な言葉が存在しないので、
本書ではそれら当事者をまとめて「脳コワさん」(「脳コワさん」とは、
日常の生活は送れるが軽度の精神障害をもつ著者の妻が命名。冗談ぽく
楽しく病状《対象》を呼ぶ方が深刻にならずにすむから)と定義する。
●其の三
大前提として脳コワさんはその不自由の中で、目に見えない心の激痛を抱えている
●其の四
高次脳機能障害者となった僕が回復していく過程で、その不自由がどんなもので、
その原因はどんな脳機能の問題で、どのように工夫すれば不自由に伴う苦しさを
緩和できるかを模索する。メソッドの多くは脳コワさん全体に使えるであろうと
思う。
●其の五
脳コワさん当事者から、医療や支援の現場、脳コワさんの家族にお願いしたいこと
以上である。
本書はあくまでも僕の体験をベースにしたものであり、僕の抱えた障害が三年未満
でほぼ回復に至るという程度の軽度のものだったから、こうして一冊にまとめる
ことができた。
(注:(黒字の書き加え)・赤はこちらでしました)
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① 幼児の夜泣きの原因
「夜泣き」があった。
こういう症状が出ることがあるとは退院するとき知らされていなかったので、
小さい幼児のように自分が夜中にパニックになるのに驚いた。
高次脳機能障害はさまざまあるけれど、その中で
大きな位置を占めるのはパニック障害。
「パニック」といっても現れかたはいろいろあり、
夜、寝床に入り、ひとり静かになると、
ウ・ワ・ワァー・ワァー ZZZZZZZー
パニックを起こすことがあると著者は述べる。
高次脳障害の他の苦痛、不快な症状の解決を求めたときと同様、著者はしつこく
探求し、納得する答えに辿りつきました。
↓
自分のそうなったときとならなかったときの日中の過ごし方を振り返ってみたら
昼間、親しい人たちと楽しい時間を過ごしたときに
限って、その晩、夜泣きのパニックに襲われていた
ことを発見した。
「これは何だ?どういうことだ?」
↓
鈴木さんの、まだ回復途上にあった脳は幼児なみで
たくさんの情報を脳がうまく処理しきれなかった
ということ。
つまり、脳梗塞からの回復途上の脳はまだ高次脳機能障害の影響下にあって、
著者のパニック発作は幼児によくみられる「夜泣き」と同じようなもの。
ここを読み、おおいに思うことがありました。
わが子のときは働き盛りだったので夜中に泣き出してくれると「あしたも仕事だし
泣いてくれるな…早よ寝てくれ…」とあやすのに必死で夜泣きの原因なんか考えた
こともありませんでしたが、
孫(幼児)の夜泣きにあい、日中はしゃいでいたから疲れたのだろうと思ったが、
夜中、やっと落ち着いた脳が(小さいなりに)楽しかったできごとを処理、整理
しようといっしょうけんめい働いており、あまりにいろいろいっぱいあったので
追っつかない。それで夜泣きという形のパニックを起こしたのだと納得できた。
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② 医療者は、高次脳機能障害のさまざまな症状の
一つひとつを具体的に、当事者(患者)や家族に示して
ほしい。
「夜泣き」という現象が、高次脳機能障害の一つの
症状として(幼児だけでなく)大人にもあることを、著者は
自分の体験と考察によって納得したけれど、
脳が損傷を受けると(傷ついた部位、傷の程度によりさまざまでも)
発症する症状にはこういうものがあり、発症理由や
苦痛・不快対策としての対症療法、時間はかかるが
根治(または軽減)するにはこうしましょうとていねいに
教えてほしい。
「患者さま」と呼ばれなくて結構。
患者・家族はこういう医療者の姿勢をこそいちばん望んでいます。