『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』 河邑厚法徳+グループ現代
という新書を読んだ。
「お金」。
社会に必要とされる限り、つき合わされるモノ。
「モノ」だけど、神さまのようだ。
多く持つほど、「金持ち」になるほど幸せになる
気がする。
(そうだとしても 私も金持ちになりたい。でも「大金持ち」でなくていい)。
お金の持つ「物神性」にダマされないためには、
お金の本質を考え、根源的にとらえるほかない。
そうしないと人間らしい豊かな生き方はできない、
とエンデは、深く考えていたと知りおどろいた。
エンデは、子どもに「お金、流通のような抽象的なむずかしいことがわかる
わけがない」と大人の言いそうなことに反し、理屈はまだわからなくても、
彼らが『モモ』の世界、おもしろさを感じることを通し、自分の思いは直感的に
伝わると信じていたのではなかろうか。
それにこんなことも思った。
ずっと前の記事に、河合隼雄さんの「神話」のことを(先日は北ビルマのカチンの
人びとの大昔からの云い伝えのことも)書いたことがあるが、「神話」「昔話」
「民話」などと同じく、『モモ』のような児童文学も子どもを主な相手に物語の
形式でわかりやすく語り、(人間の本来的というか)素朴で自然な感覚に働きかけ
深い共感を引きだすのだろう。
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この本は講談社からの出版で、初めに「講談社BOOK倶楽部」というサイトの
本書のPR・紹介を引用します。
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【引用】
暴走する「お金」の正体
『モモ』の作者が遺した、お金の常識を破る思想。リーマンショックを予言した奇跡の書
『モモ』『はてしない物語』などで知られるファンタジー作家ミヒャエル・エンデが
日本人への遺言として残した一本のテープ。
これをもとに制作されたドキュメンタリー番組(1999年放送/NHK)から生まれた
ベストセラー書籍がついに文庫化。…
●人間がつくったお金は、変えることができるはず
●どうすれば「お金の支配」から自由になれるのか
●「老化するお金」「時とともに減価するお金」とは
●「地域通貨」を生み出す「共生の思想」
●ベストセラー『モモ』には、お金への問題意識が込められていた
強く印象に残った部分(引用)に番号をつけ、3回に分けて紹し、感想を述べます
きょうは①~③まで。
【引用】
①
エンデが本当に考えていたのは“お金の正体”でした。
そこで見えたことは、お金が常に成長を強制する存在であることです。
科学とお金は共通点があります。現状に満足することがなく“科学は進歩”を、
“お金(資本)は成長”を追い求める点です。それが誰も疑わない現代の神話です。
②
お金が持つ成長への強制には理由があります。時間とともに加算される利子です。
時間がたてばたつほど利子は増えるので、投資されるお金はそれに見合う見返りを
求めます。…
もう一つ成長を強制する力は“人間の欲望”だと思います。…
③
(エンデの言葉)「重要なポイントは、パン屋でパンを買う購入代金としてのお金と
株式取引所で扱われる資本としてのお金は、2つの異なる種類のお金であるという
認識です」…
(注:太字・赤字はこちらでしました)
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■ ①②
現状に満足せず「前進」「成長」を続けること。
これが人間・人類と他の生き物との決定的な違い
なのだろうか?
だから「成長」「成長」…と、高度経済成長の時代は明らかに終わったと
誰もが認識していても、「成長」…と言わないと不安になってくるのだろう。
「人間が生みだす欲望」は「科学・技術の発展」を
生みだし、それ自体が「お金」になる。
「お金」は新たな「欲望」を生み、それがまた新たな
「科学・技術」を生む。
・「欲望=科学=お金」ではないが、前進・成長という観点にたてばまさしくそう
・科学がお金になるのは具体的には「技術」としてあらわれ、正確にいうなら
「技術=お金」だ。
(お金になる、儲かる技術には国さえお金を注ぎこむ《お金=資本 出どころは
国民からの年金など豊富に存在》。その技術を有する会社の株を買う《という形の
賭け事》。外れて大損しても隠せばいい。バレても「すみません」「国がやった
ことだから許してチョ!」でご破算)
・お金はお金を生むので投資にも国は目がない
・技術もお金も「速さ」が命。他より速く進歩、成長しなければならない。
「速さ」は価値だが、遅いとの比較があっていえること。つまり「競争」が命。
「競争」が大前提のうえでの「進歩」であり「成長」なのだ。
この社会は「資本主義」。
あらためて、「競争」という資本主義の論理が
貫いていることを痛感した。
「競争」の反対は「共存」。
今日では「競争」自体が成りたたなくなるほど地球は人間の手によって汚され、
(皮肉なことに)汚染を救う、エコの分野での商品開発などが「競争」目的に
なってきた。
一方では同じく「競争」は無意味になるほど、巨大化・グローバル化した
ごく一部のアメリカなどの企業・資本(国民国家を凌駕)の存在。
残された道は「共存」しかない。
(妖怪・化け物のような巨大なグローバル企業・資本だって多くの人々からの
支持を得ようとすれば、環境にやさしい取り組みをしようとするし、誰もが便利・
快適と感じるモノを開発し拡げようとする《逆に言えば、そんな姿勢が成功して
大きな企業へと成長したのだろう》)
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■ ③
「パン屋でパンを買う購入代金としてのお金と
株式取引所で扱われる資本としてのお金は、
2つの異なる種類のお金であるという認識」
生きるのに必要なものを手に入れるための
便利な交換手段として、人間はお金を発明し、
利用している。
他の生き物はお金が存在しないので(いわゆる)
「弱肉強食」という自然の論理に従うほかない。
動物はみな、自分の体を死ぬまで維持し、自分が親から生まれてきたように
子どもを生み育てる(→個体の生命維持と種の存続維持)。
人間以外の生き物は、一日の大半をそれに費やしている(次の日もそうしなければ
ならないので、それに備えて《あとは》休む、寝るだけ)。
人間には、お金がある。一日の大半をそれに費やさなくていい。
〈オマケ〉
半世紀近い昔に観た映画『ライムライト』の、人生には勇気と想像力と、そして
ちょっとのお金があればいい、という主人公道化師チャップリンの言葉をいまも
よく覚えている。