『日本が売られる』の途中ですが、数日前の朝日新聞、鷲田清一さんの
「折々のことば」にとても胸に響くのがあり、きょうはそれを書きます。
【引用】
「 ここのうどんがいかに旨(うま)いか、という話をするときでも、
まるで出来の悪い家族のひとりについて話すような空気が流れた。(中原蒼二)
数ある麺類の中でも、うどんはとりわけ身に優しいもの。腹に納めると体が
芯からほどける。だからうどんについては誰も蘊蓄(うんちく)を傾けたり、
「どうだ」と凄(すご)んだりしない。
これといった取り柄(え)もなく目立たぬ奴(やつ)ですが、いないと困る大事な
奴ですと、客まで言いだしそうな気配がうどん屋には漂う。
居酒屋店主の『わが日常茶飯』から。」
読んだ途端に、
あーあー、わかるわかる…
私は麺類は好きだ。
なかでも蕎麦がいちばん好き。
でもいちばんよく食べるのは即席ラーメン(店のものを食べたいが、量が多く残しそうだし
残してはつくってくださった方たちに申しわけないので、胃がなくなってからは食べない)。
蕎麦もラーメンも好きな人が多いようで、テレビなどではこだわりの蕎麦店・
ラーメン店、こだわり職人さん(蕎麦の場合は実から自分で育て、注文に応じて客が食べる
直前に打って出す《必要なら冷やす》という徹底ぶり)がよく紹介される。
うどんは、そういう「こだわり」はないのか、紹介されることは少ない。
特徴としてせいぜい麺が硬めとか軟らかめとか。
(でもいろ地域によりいろあるようです。いつかこんぴらさんに参ったとき門前町の老舗で「うどん県」
らしいうどんを食べました。
ちょっとの具に醤油を少しかけただけのとても素朴なものでしたが、これがうどんの神髄!と
うどんらしくない大げさな感慨をもちました)
ラーメンは子どものころには食べた覚えがないし、蕎麦はこだわっていないのなら
よく食べたのだろうけどあまり覚えていない。
頭での記憶が薄いというだけでなく、腹が覚えていない感じがする。
うどんは違う。
「いないと困る大事な奴」と言う居酒屋店主の声が聞こえてきそう。