『デジタル社会の罠』 西垣 通
(グーグル画像より)
「情報」。
人が生きていく上で不可欠な空気みたいなものだから、
ケータイ(スマホ)がなかった昔は、何かを知る必要に迫られたら人に聞いたり、
図書館で調べたり、ラジオ・テレビから情報を得ればよかった。
何かを伝えようとするなら、手紙を書いたり、電話かければよかった。
(それで困るわけではなかった。みんなそうしていたから。
スマホは手軽(移動可能)なすばらしい情報入手・娯楽・コミュニケーションの道具だけど、
私は家の外で必要になることは滅多にないのでガラケーだけで間に合っている)
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「〈情報とは何かー生きる上で大切な「意味」〉
情報とは何らかの「意味」を持つもの…
肝心なのは、いったい「誰にとって意味があるか」である。…
情報は、客観的・普遍的なものというより、本来は個人ごとに異なる主観性を持つ。
生きていく上で大切な存在が情報なのである。
…
(「ロボットと恋ができますか?」に、ロボットに恋はできても)
ロボットの方が恋してくれることは決してない。…
AI研究者の中には、こういう見解に猛然と反発する人たちがいる。
彼らは人間も一種のデータ処理機械だと考えており、ロボットも人間も同質だと断定する。…
二十一世紀は人間とロボットが「共生」する時代だと高らかに宣言…そういうSF的発想…信仰…
(その信仰は)もともと主観的で流動的なはずの「意味」を固定し客観化してしまう。」
「〈宇宙開発と「生命誕生の謎」-悪夢か、抗争を超える共感か〉
(著者が以前)宇宙開発の目的がよく分からないと書いたら、知人の生物学者から
「生命誕生の謎解き」という学術的な回答をもらった。…
学術的には興味ぶかいにせよ、…パンドラの箱を開けるようなものではないのか。…
中途半端な謎解きによって、現在の「人新世」がかえって一段と深刻さを増していく。…
(たとえばある惑星、彗星から地球では未知なる物質を持ち帰りその物資を用いて)
フランケンシュタイン博士のようなマッドサイエンティストが、恐ろしい怪物を人工的に創りあげる
という悪夢…相手はAIと違ってどういう意図を持ち、どんな行動をするのか予測できない。
さらに次々に増殖していくとすれば
…
(ここからは立花隆『宇宙からの帰還』を紹介し、感想を述べる)
多くの宇宙飛行士が、キリスト以外の神の存在も認め…どの宗教もよきものだ、というのだ。…
地上の国家間の対立抗争はバカげており…
同書のむすびには「(肉体が)宇宙という新しい物理的空間に進出することによって、
人類の意識がこれまで知らなかった新しい精神的空間を手に入れる…」」
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(はじめに書いたように)
「情報」とは「人が生きていく上で不可欠な空気みたいなもの」であって、
自分という主体が感じ、知るものすべてが「情報」だ。
(現代を指して「情報社会」というのは、多くのアナログ情報がデータ化されデジタル情報となり、
それらは世に溢れ、あまりにやすやすと手に入るようになったし、楽しめ、コミュニケーションし
やすくなったからだろう)
「情報は…本来は個人ごとに異なる主観性を持つ。生きていく上で大切な存在」。
溢れる「情報」に惑わされる、騙される人が増えるという現実を目にすると、
「情報」のほうが主体で人間のほうが使われている、支配されている気がする。
(無限とも言えるいろいろな「情報」を自由に取り出し、楽しめるだけではなく、他人との
コミュニケーションも可能なスマホは「生きていく上で大切な存在」だけど、それ自体は
「生きていく」という目的のための手段、「道具」にすぎない)
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人間がロボットを恋することは大いにあり得ると想うけれど、ロボットのほうから
自分ひとりに恋してくれることはあり得ないと、私も思う。
「もともと主観的で流動的なはずの「意味」」とは恋心のことだろうけれど、
恋心というまったく個人的な感情、非合理的なものを、最高のAIロボットでさえ
「固定し客観化」、つまりデータ化しなければならないので、ある人という特定の
個人の心だけを射止めるのは無理。
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私は科学者なら誰でも未知への探求に興味や関心を惹かれると思っていたが、
著者は違った。
「宇宙開発の目的がよく分からない」と思った。
で、知人の生物学者にその思いをぶつけたら「生命誕生の謎解き」と、
優等生みたいな返事があったという。
で、著者は思い考える。
「学術的には興味ぶかい」けれども「パンドラの箱を開けるようなもの」
ではないかと。
(以下、著者の心配が述べられる)
すごく共感した。
温暖化や汚染でこれまであまり見られなかった自然災害が世界各地で多発している
地球環境問題、それに貧困という社会問題など、人類がこれからも長く地球で
安泰して暮らせるよう、「宇宙開発」よりも、いくらでも解決すべき課題はある。
(「宇宙人来襲」とか超非常事態が起これば別。
「パンドラの箱を開け」ても仕方ないと思うけど)
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私は『宇宙からの帰還』を読んだことはない。
でも、1961年、初めて宇宙に出た宇宙飛行士ガガーリンのあまりに有名な言葉
「地球は青かった」は知っているし、
以後に続く宇宙に出た宇宙飛行士の神の存在を感じたというようなニュアンスは
聞いたことがある。
「宇宙という新しい物理的空間に進出することによって、
人類の意識がこれまで知らなかった新しい精神的空間を手に入れる」を読み、
大統領や首相など国のリーダーに立候補したい人は、宇宙に出た経験をもつことを
資格要件にすればいいと思った。
曼殊沙華 散るや赤きに 耐へかねて 野見山朱鳥