今日は
④「絶滅の危機はコピーで乗り切る」
⑤「情報収集は動物にまかせた」
⑥「イルカを救った人工ビレ」
三つの話です。
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「④ 絶滅の危機はコピーで乗り切る
絶滅危惧種の場合には、なお押し進めるだけのやむにやまれぬ理由がある。
絶滅危惧種をクローニングする…クローンを野生に放つ…
(いつか完璧なクローニング技術が開発されても、絶滅危惧種「アフリカヤマネコ」の例を挙げて
著者は「そもそもこの小さな外国産のヤマネコを窮地に追いやったのは、生息地の破壊をはじめとする
さまざまな人間の干渉であることを考えれば、…クローンは自然界での生活を自然保護区ではじめ
なければならないかもしれない」という。
困難だけども、クローニング技術によってでも絶滅危惧種の再導入はやるべき価値があるという。
「動物の再導入の波及効果が環境そのものの回復を助けることもある。
すべての種が複雑な生態系の一部を担っている」)
…
(完璧なクローニング技術が完成しても)絶滅した動物を生き返らせる試みはやさしいどころか、
むしろ残酷だということがわかるだろう。復活を遂げたマンモスやタスマニアタイガーには、…
いったいどんな運命が待ち受けるのか。…
現在の地球はこうした動物が必要とするものをもう与えることはできず…
(クローニング技術は)生息地を復元することも修復することもなしに、ただ新しい動物を量産
できるようにする。
多くの生物学者にとっては、クローニングは大騒ぎするだけで中身がなく、…生息地の喪失、密猟、
環境汚染、その他の人間活動には見向きもしないハイテクの見世物ということになる。
…
クローニングは万能薬ではないが、…選択肢をもつのは悪いことではない。
この地球の状況を考えれば(致し方ないと著者は述べる。そしてクローン遺伝子を冷凍保存する
「冷凍動物園」《DNAバンク》という方法について言及する)
DNAバンクは「リスクが小さいし、…将来…に備えて保険をかけておくのは有意義」
⑤ 情報収集は動物にまかせた
最新世代のタグ(首輪につけた小型発信機)では、動物たちが日々の暮らしを送っているあいだ、
そのからだに取りつけられたコンピュータ-が動物の移動を記録するばかりか、
海洋および変化する周囲の状況に関するデータも収集している。…
電子タグは動物の役割を受動的な研究対象から能動的な研究協力者へと変えている。
…
マグロにタグを装着
(することは)動物の福祉という観点から問題だが、科学的にも問題だ。
私たちは動物をよりよく理解するためにその行動を追跡しているのであり、
もしタグそのものが行動、生理機能、または生存可能性を変化させてしまうなら、
データはまったく役に立たないわけではなくてもゆがんだものになる。
…
アザラシによる情報収集
タグを装着したゾウアザラシなどの海の動物から伝えられるデータは、海洋生物を脅かす激しい環境の
変化を監視し、予想し、備えると同時に、海の変化に伴って動物に何が起きるかを予測するうえで
大いに役立つだろう。
…
タグ装着の技術は急速に進歩し、追跡プロジェクトは急増している。
(しかし危惧す科学者もいる)追跡調査が貴重なデータをもたらすことができると認める一方で、
私たち人間は新しい道具によって惑わされていまいか…
自然界で平和に共存したり、持続可能な世界をつくったりすることではなく、
「すべてのものにタグをつけさえすれば…すべてがうまくいくだろう」と…
⑥ イルカを救った人工ビレ
動物の体にセンサーとタグを装着する方法が種全体を救うのに役立つとしたら、
人工の尾ビレや足はその対極にあり、運の悪い1頭、1匹、1羽ずつに手を差しのべる方法になる。
…
ウィンター(あるイルカの名前)の人工尾ビレ
(人工尾ビレをつけられたウィンターは)正しい泳ぎの姿勢を訓練するトレーナーと背骨の整合性を
チェックする医師による継続的なチェックも要る。…
さらに義肢装具士が身近に控え、尾ビレの破損の修理とさまざまな調整も続けなければならない。…
ウィンターは水族館のマーケティングツールだけでなく…義手や義足をつけた子どもたち…との
ふれ合いを演出し…子どもたちの心を癒す
…
人工装具で動物を救う
獣医学と材料科学が進歩し、傷ついた生きものにとってかつてないほど数多くの選択肢が生まれている
現代では安楽死に言い訳はきかない(これまでは、傷ついた生きものは可哀想だからと殺されていた
《安楽死》。人工装具で動物を救う仕事に関わっているある人は言う。
「これは命と愛情の問題なんです。動物と人間の愛の絆の問題です」)

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④ 絶滅の危機はコピーで乗り切る
「コピー」
(についての余談。
古い世代の私は「コピー」と聞くとすぐに「コピー機」をイメージする。
機械にセットしボタンを押すだけで、見本と同じことが書(描)かれた紙が魔法のように写され、
何枚でも印刷され、機械から出てくるのをいまも不思議に感じる。
時が過ぎ、世の中がIT時代に入るころ、遺伝子の話もよく聞くようになった。
すると「コピー」は機械のことだけではなく、生きものにもいえる普遍的なもの、一つの原理
だということを知った。
《単なる「写し」、「複製」、「もの真似」に過ぎないという安っぽいイメージが消えた》
私たちの日常生活だって、たまに予想もしない突然のこと《「突然変異」みたいな》が起きる。
その「日常」は《「突然変異」みたいな大きなものは起きなくても、中身は絶えず変化しているが》
短期間だけ見れば、形はだいたい変わっていない。つまり今日は昨日の「コピー」、明日は今日の
「コピー」ともいえる《こじつけ》。
また、こんなふうに「コピー」の「繰り返し」という面に目をつけると、子どものころの宿題、
同じことを繰り返す中で覚えていく漢字の書き取りを思い出した。
そんな私の思い出、思考などどうでもいい話だけど、ともかく「コピー」という現象、世界が一般的、
普遍的で、いろいろな事物に見られるという気づきは私には新鮮だった)
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「クローニング」
この本にはその言葉がたびたび出てくるけれど、生殖の専門用語なので一般的には
あまり使われない(「コピー」は別にして)。
人間は、このままの人間活動を(過去の「コピー」のように)繰り返し続けていくなら
自らを滅ぼすことになるかもしれないと遅まきながら気づき(「華厳」という見方の
「自即他」の通り)世界はすべて繋がっているのだから他の動物、生きものたちも
大切にしなければならないと気づき、(そればかりではないが)
「クローニング」が生まれた。
ところがそのバイオ技術は、「大騒ぎするだけで中身がなく、…生息地の喪失、
密猟、環境汚染、その他の人間活動には見向きもしないハイテクの見世物」
になろうとしている。
「生息地の喪失、密猟、環境汚染、その他の人間活動」の繋がりまで見据えた
総合的な取り組みの中でしか、「クローニング」という生殖技術は生きない。
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⑤ 情報収集は動物にまかせた
「最新世代のタグ」がすばらしいのはテレビを見てよく感じる。
それがデータとして集められて解析、研究…さまざまに利用、活用されている。
(だがタグそのものの欠陥や装着ミスなどで、「動物の福祉」に問題が起きるということまでは
知らなかった)
「タグ装着の技術は急速に進歩し、追跡プロジェクトは急増し」ており、
「追跡調査が貴重なデータをもたらすことができると認める」けれど、
「私たち人間は新しい道具によって惑わされていまいか」と心配、
「自然界で平和に共存したり、持続可能な世界をつくったりする」という
本来の目的を忘れているのではないかと危惧する科学者もいるという。
これも考えさせられた。
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⑥ イルカを救った人工ビレ
「動物の体にセンサーとタグを装着する方法が種全体を救うのに役立つとしたら、
人工の尾ビレや足はその対極にあり、運の悪い1頭、1匹、1羽ずつに…」
なるほどなぁ!
「イルカを救った人工ビレ」とひと口に言っても、その事実の背後には
これだけ多くのスタッフ、専門家がおられるんだということに先ずは驚いた。
(どんなに小さな事物でも、その背後には目には見えない多くの要因、事実があるということを
痛感した。
《それに関連して》話が飛躍するけれど、私は刑事ドラマのファンでよく見るかれど、出来のいい
《と感じる》物語は、その罪を犯した加害者の心情に同情、共感せざるを得ない複雑な背景があり、
それが必ず見えてくる)
「ウィンターは水族館のマーケティングツールだけでなく…義手や義足をつけた
子どもたち…とのふれ合いを演出し…子どもたちの心を癒す」
すでにひねくれた大人になっていた私でも(子どものときは素直で純真だったと思うので
55歳ではなく)子どものとき病気や事故で、あるいは先天的に障害があったら…と
想像すると、上に述べられていることが強く胸に響く。
「人工ビレ」はウィンター自身だけではなく、元気に泳いでいる姿を通して
「義手や義足をつけた子どもたち」自身の「心を癒」しているということ。
最後の「人工装具で動物を救う」の話もよく納得できた。

とどまれば あたりにふゆる 蜻蛉かな 中村汀女