『人口減少社会のデザイン』 広井良典・著というこの本は
現代の日本について、本当に(著者名ではないけど)広い視野から書かれています。
大切な内容が多くて私にはとても紹介しきれず、最後の今日も
いちばん胸に響いたごくごく一部だけを書きます。
① その誕生に見える資本主義の本質(のようなこと)
② 持続可能な福祉社会
③ 「欧米」といういい方をしない

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①
「(歴史家ブローデルが「「資本主義」イコール「市場経済」ではない」と述べていることを挙げ
「市場経済」は「資本主義」より大きな概念だという。
確かに、近代「資本主義」社会が成立する18世紀以前からずっと「市場経済」は存在していた。
日本でも古代から「○○市」があった。
著者は、「資本主義」経済は「市場経済」に加え、
「「限りない拡大・成長への志向」という点を併せもつことがその本質」と述べ、
「1600年の「東インド会社」設立を契機とするヨーロッパ諸国の植民地経営が土台を築いた」と。
さらに「「拡大・成長」にいちばん重要なのは人々の価値意識や行動パターンの次元の問題」」といい
だから「「私利の追求」、…を”肯定的に”とらえるような思想ないし価値観が、何らかの形で
存在しなければ資本主義というものは機能しない」と述べる。
その精神、思想を表したのがマンデヴィルの『蜂の寓話』という話だという。 →
「欲望が少ないということは個人の徳としてはいいかもしれないが、
社会全体の富にはつながらない。
国民の富や栄誉や世俗的な偉大さを高めるのには、
むしろ強欲や放蕩が社会全体にとってのプラスになる」)」
②
「(著者は「人口減少社会と「富の分配」」ということで、
「人口減少社会となり、また経済が成熟して「パイ」が従来のように拡大しなくなり、
しかも高齢化の進展の中で年金や医療、介護など社会保障の費用が大きくなるとともに、
格差や貧困をめぐる課題も顕在化してくると、
まさに富の「分配」や、社会保障などの「負担」を人々の間でどう分かち合うかということが、
中心的なテーマとして浮上」するという一般的な理屈を述べ、
日本はいま生きている現役世代の「負担」にせず、”その場にいない人々”、
すなわち「将来世代」に押し付けてしまうという。
しかし、”その場にいない人々”のことを考えるという点が、持続可能性というコンセプトの中心)」
③
「(著者は「「資本主義の多様性」とアメリカ・ヨーロッパ・日本」ということで、
「アメリカ → 強い拡大・成長志向+小さな政府
ヨーロッパ → →環境志向+総体的に大きな政府
日本 → 理念の不在と”先送り”」と述べ、
現実にはアメリカとヨーロッパは「あまりに違いすぎるから」
「欧米」という表現は使わないという)」

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①
「「資本主義」イコール「市場経済」ではない」ということをあらためて
思った。
「自由市場」、「自由な競争」、「市場主義」という。
(実態は自由はなく独占的なのに)
それをマネて平然と使う自分が恥ずかしくなった。
(もちろん他人に披露して得意がるのじゃなく、頭の中でのこと)
いちばん素朴な、それだけに本来的・本質的な自由な市場は、自然発生的な
需給に基づく交換市場。
(お金、貨幣がまだ仲立ち手段として出てこない時代の「物々交換」)
それが、人間だけに特有な科学的、合理的な思考の発展がいまではスマホを
生み出したように、昔に貨幣を生み出し、貨幣は「お金がすべて」になり、
無限に欲望を生む。
(歴史の授業で、「○○時代に入ると貨幣が広く流通するようになり、人々の生活はよくなり、
さまざまな文化が生まれた」と習った。
つまり、お金が手に入ると人々の欲望が高まり、生活《モノ》だけではなく文化・芸術的なものへも
向かうということ。
そこまで深く考える子どももいたのだろうが、少なくとも私はそこまで考えることができなかった
で、想った。歴史の先生だったらお金の本質みたいな話をしてみたいと)

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「欲望が少ないということは個人の徳としてはいいかもしれないが、
社会全体の富にはつながらない。
国民の富や栄誉や世俗的な偉大さを高めるのには、
むしろ強欲や放蕩が社会全体にとってのプラスになる」」という『蜂の寓話』を
聞いて、もちろんトランプが頭をよぎった。
見方をマンデヴィルに合わせれば、この説は正しい。トランプは正しい。
でも見方を変えれば、この説は間違っている。トランプは間違っている。
(もちろんトランプだけのことじゃないけど)
何故か?(私でも気づく簡単なこと)
先ず「社会全体の富」というが、「社会全体の富」とは何をいうのだろう?
(たぶんGDPみたいなものをいうのだろうけど)
GDPは、その社会、国に大きな「格差」があろうがなかろうがわからない。
次に「社会全体にとってのプラス」。
何が「社会全体にとってのプラス」なのか?

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②「”その場にいない人々”のことを考えるという点が、持続可能性…」がすごく
新鮮に聞こえた。
”その場にいない人々”、すなわち「将来世代」の考える、想像することが
持続可能性の中心でなければならないこと。
(「格差」是正の中に、私は「”その場にいない人々”」「将来世代」までは頭になかった)

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③
「自由主義社会」という言葉、概念で括ろうとしても、自由を第一に重んじる
(食えない「自由」もある)ことでは中国、北朝鮮とは違えど(かといって中国などで
「平等」が尊重されているかといえば、まったく違う)、経済最優先それに伴ういろいろで
アメリカとヨーロッパの違いはあまりに大きい。
(私も強くそれを感じる。
社会の中身だけではなく、人の住んでいる街などの風景も違う。
ちょっと気をつけて見ていると、その違いが強く感じられる)
トランプが大統領に就任したからということではなく、アメリカとヨーロッパは
あまりに違いすぎるということ。

よみさしの 小本ふせたる 炬燵哉 永井荷風