カメキチの目
自然観察』(唐沢孝一)という本を読んだ。
自然ゆたかなところだけでなく、街でも体験できる自然観察をあらわしたものである。
(新書版で一般向け。カラー写真も豊富。とてもわかりやすく、読んでいて楽しくなります)
おもしろい話がいっぱいあるなかで、二つだけ紹介します。
① JR山手線駒込駅のツバメ
著者はおととしの6月、山手線駒込駅でツバメ3羽がぶじ巣立ったと知った。
もちろんツバメが巣立ったことじたいはなんでもないのだが、筆者をふくむ自然観察グループが1984年ころから東京都心でツバメの繁殖を調査したところでは、1980年代(まだ国鉄時代)には、山手線も中央線も、ほとんどの駅で改札口付近の頭上に巣があったそうだ。
(しかし、気づいたときにはツバメの繁殖は見られなくなっていたとのこと)
筆者によれば、繁殖、すなわち巣をつくってヒナを産んでヒナが巣立つまで育てるためには、
①食物である飛翔昆虫がいること ②巣材となる泥や藁が入手しやすいこと ③泥などが付着しやすい建物であること(ツルツルした新建材はダメ) ④天敵からツバメを守ってくれる人の存在が必要である。
ところがJRとなってからは、駅舎の改築で現代的な造りの駅にほとんどがなった。
東京にお住まいの方、初夏に駒込駅を利用することあったら、構内を見あげてください。ひょっとして…
(住んでいるマンションの理事会の定例会議は、4時間もかかり相変わらずため息をついている。先日は議題項目の細部に「ツバメの巣撤去費用〇〇円」とありポカンとした。公衆の前では障害を口実に発言をしない卑怯な私である。ある役員さんがそれはおかしいとおっしゃった。心で私は拍手した。が、反対の理由はおカネをかけなくても自分たちで撤去すればいいとわかり、こんどはガッカリした)
【ツバメとはまったく関係のないオマケ話】
おととしの5月すえ、旅の帰りのついでに山手線を(初めて)ひと周りした。
東京がテレビによく出るので街を見たかったのだ。電車の中から観察する「東京」。
気になる駅ではちょっとのあいだ下車し、駅周辺を歩いてみた。
「ここが電気街の秋葉原…」「よく聞く渋谷。れいのスクランブル交差点があるところかぁ…」。有名な「銀ブラ」も欠かさなかったが、こっちは通りが多すぎ、どこがどこやらよくわからなかった(大きな時計がはめこんである建物が目印の交差点はどこだったのだろう?)。
山手線でひと周りだから駒込駅も通ったはずなのに、そこは覚えがない。
高いビル群。山などまったく見えない。新幹線なみに車両が連結された長い電車。ひっきりなしに往きかう電車。駅に着くたび乗り降りする人々の多さ、きびきびした姿。
窓からの街観察、駅観察だけに夢中だったばかりではなく、ときどき車内にも目を向けた。
安全のために揺れたときにつかめるフレームの多さ、吊り革の工夫、シートのクッション性とともに客が座りやすいよう配置にも工夫がなされており、さまざまなところに目がいった。
あんまりキョロキョロして頭がクラクラしたが、全身で東京を感じた。
(注)グーグル画像より
とくに、この少しカーブした棒(写真の黄色のもの)が乗客が立っていても揺れたらすぐ掴めるようにあっちこっち取り付けてあるのには「感激」といっていいくらい、すばらしい安全対策だと思った。
② 稲刈りとサギのオートライシズム
「オートライシズム」というのは、コンバインなどで稲刈りをしているとき(「稲刈り」だけに限らないが)、そのあとに跳(飛)びあがった虫やカエルたちを鳥たちが捕食するように、人間の活動を積極的に利用して利益をえることだそうだ。
著者は2017年9月にみた、コンバインに集まるサギの群のことを書いていた。
シラサギ(半世紀ちかく前から走っている名古屋・北陸間の特急電車は「白鷺」といいよく乗りました。いまも健在)とひと口でいうけれど、ダイサギ(90㎝)、チュウサギ(70㎝)、アマサギ(50㎝)、コサギ(60㎝)の総称。
コンバインに集まるサギの群。よく観察するとチュウサギとアマサギがほとんどなのだそうだ。
これはなぜかというと、チュウサギとアマサギは嘴がダイサギやコサギより短く、ノコギリ状の切れ込みがあって、昆虫やカエルなどの小さな獲物をたんねんに「はさみ捕る」「つまみ捕る」のに適し、一方、嘴の長いダイサギやコサギは、獲物に狙いをつけて嘴をいきおいよく突きだして魚やザリガニなどを捕食するのが得意とのこと。
私が好きな日帰り温泉施設は露天風呂につかり、そばの水辺が見わたせる。
ときどき白いサギが水辺の水草あたりに素早く頸をつっこむのを見るが、アレはダイサギかコサギだと判別がついた。
どうってことはない話だが、似ていても見分けがつく、区別できるようになって嬉しい。なんだか「サギ博士」になった気もち。
(「さ・ぎ」とキーボードに打ちこむと私のパソコンはいちばんに「詐欺」が出る。そっちが使用頻度が高いのか?)