カメキチの目
『天才バカボン』で、
「これでいいのダ!」
を初めて聞いたとき、
なにがイイのだ?
と思った。
赤塚漫画は絵もストーリーも単純、すなお。そして「バカ」が満載だ。
私は『おそ松くん』のころから赤塚漫画の大ファンだったが、根性ものの『巨人の星』は野球は苦手、努力や根性も巨人も好きではないので漫画のほうも好きにはなれませんでした(やさしいお姉さんは別)。
続いて、
わけのわからんことを…言う
と思った。
「これでいいのダ!」がわかり(あくまで自分なりの解釈。作者の真意は他にあるのかもしれない。でも私は「自分の解釈」でいいのダと思った)、納得し、名言だと信じるようになるまでには、それなりの人生経験が要った。
いまでこそ自分のことを「いいかげん」「ご都合主義」人間と信じ、そういう自分を全面的に肯定していますが、
それまでは、「こんなはずではなかった」「他にあったのでは」「努力が足りなかった」「能力がなかった」「ウンがなかった」…
心のなかで、そんなグチが渦まいたこともたびたびあった。
■若いころ就職がうまくいかず悶々としていた(妻子を残し、離れた土地でチリ紙交換をしていたことも)。
あるとき、たまたま、テレビがやっていた赤塚漫画のアニメの一場面、ただ空と原っぱと大きな木というきわめて単純な構図の絵が目に入った。
これがジンときた。
(おそらくそのときの「悶々」が強く影響していたのでしょうが、単純な絵が《大げさにいえば》「神の啓示」みたいに胸に響きました)
「就職というつまらんことにウジウジするな。自然のなかに出でよ」
赤塚不二夫は私には「カミほとけ」のようなものかもしれません。
(この拙文を書こうと思ったのは、NHKの土曜ドラマ『バカボンのパパよりバカなパパ』というすばらしい番組をみて昔を思いだしたからでした。ドラマは赤塚不二夫の娘さんからみた父親像、バカっぷりを描いたものです)