最後です。
第3章「売られたものは取り返せ」で世界各地のすばらしい取り組みが紹介されて
います。
いろいろありますが、水道再公営化と協同組合と子どもを農薬から守るの三つだけ
取りあげます。
【引用】
「第3章 売られたものは取り返せ
〈水道を民間企業に任せるのはもう限界~フランス〉
・(パリでは)まず25年前に両社(ヴェオリア社とスエズ社)に売却した
水道事業の株式を買い戻し、市が100%出資する「パリの水公社」を設立、
2010年1月から、パリの水道を正式に公営に戻すことを決定する。…
・その後世界各地の自治体がパリ市の水道再公営化を成功例として、
次々に後に続き今もその数は増え続けている。…
「災害があれば、採算の取れない地域がまず真っ先に切り捨てられる。…
企業運営としてはごく当たり前のこと…生命や暮らしに欠かせない水道は、
安く提供し続けるために〈設けなくていい公営〉にしておかなければならない
ことに、パリ市民がようやく気がついただけ」
…
〈考える消費者と協同組合の最強タッグ~スイス〉
・自分たちの食糧は自分たちで守れ
人口800万人台のスイスでは、10万筆の署名を集めれば、法的に拘束力のある
国民投票が行われ、政府は投票結果に従わなければならない。
その結果に沿って憲法改正も頻繁に行われるため、国民は常に主権者であることを
意識させられるのだ。
・食育が国防意識を育てる
・なぜ国産農産物を守らなければならないのか。
農家を守ると、スイスの美しい景観や気持ちの良い環境が守られること。
・地産地消が共同体を守る仕組みについて
そういう教育を受けた子供たちは当然のように、食料品では高くても
国産品に手を伸ばす。
〈国民の8人に1人が生協に加入〉
・(スイスの大きな生協ミグ「ミグロ」の)創業者のドゥッティ夫妻は、
経営者の利益より社会全体の利益を目指したいという思いから、
会社を生協という形態にした。
・金融危機でも生き残る最強の協同組合
スイスの3大銀行は、世界トップのクレディ・スイスとUBS、そして
ライファイゼン協同組合銀行(ライファイゼンバンク)だ。
株主ではなく、地域の組合員に共同で所有されているライファイゼンバンクは、
顧客重視の経営をモットーにしている。…
持ち株数の多い者が力を持ち、企業利益の最大化をゴールとする株式会社
とは対照的に、預金の残高に関係なく1人1票の議決権を持ち、
民主的なやり方で経営方針を決めてゆく。…
・600兆円という農協の資金を狙うウォール街や3800万人の共済加入者が欲しい
外資保険会社は日本に農協解体の圧力をかけ続けているが、
農協が解体されれば日本の地方は「生活そのもの」が崩壊してしまう。
2018年4月。「日本協同組合連合会」は、農協や生協や漁協など、
日本国内の全ての協同組合をつなぐ「日本協同組合連携機構」を立ち上げた。
あらゆるものを「商品」にする「今だけカネだけ自分だけ」のビジネス論理の
対極にある「協同組合」は、今後私たちが売られたものを取り返し、
国の未来を守るための、重要なツールになるだろう。
・TPP、FTA、EPA、…など、あらゆる自由貿易の嵐が吹き込んでくる今、
〈平等と公正、連帯と民主主義〉という協同組合の礎であるその精神を…スイスや
韓国の市民は(略しましたが、韓国市民の憲法改正運動も述べてあったのです)
新しい憲法に込め、引き続き育ててゆくだろう。
…
〈もう止められない!~子供を農薬から守る母親たち~アメリカ〉
・「この国では、なぜこんなに食物アレルギーで死ぬ子が多いんでしょう?
ここアメリカでは子供の12人に1人が何らかの食べ物にアレルギーがあり、
3人に1人が肥満児で、6人に1人が学習障害、20人に1人が発作性の疾患を抱え、
68人に1人が自閉症。ちょっと異常だと思いませんか?」…
この傾向は欧州にも広がっており、ヨーロッパでは食物によるアレルギー反応で
ER(救急治療室)に運ばれる子供の数が過去10年で7倍に急増、
ここ日本でも2005年には3人に1人だったアレルギー人口が、
2011年には2人に1人に増えている。…
・〈アレルギーの遺伝はないはずなのに、一体なんで息子たちはこうなった
のだろう?〉
悩んだゼン氏(「マムズ・アクロス・アメリカ」という団体を立ち上げ、代表を
務める人)は、ある時ふと、子供たちが食べている食品について調べ始める。
その時初めて、アメリカ食品の80%、加工食品の85%に遺伝子組み換え原料が
含まれていると知った。
「遺伝子組み換えについては全くの無知でした。種類も3つあるんですね。
①作物そのものに殺虫成分が組み込まれているもの、
②除草剤をかけても枯れないもの、
③都合の良い特徴を出させるために特定の遺伝子をオンやオフにしたもの。
スーパーで買う遺伝子組み換え作物の8割が2つ目の除草剤耐性…」
(ゼン氏は)食事を変えてグリフホサートを息子の体内から除去
・子供を思う母親の調査能力はFBI並み
アメリカには遺伝子組み換え食品の表示義務がない。
消費者はどの食品が遺伝子組み換えなのかわからないまま、
農薬とセットで知らないうちにそれらを食べているのだ。
以前の自分(ゼン氏のこと)と同じように、食べているものが体を作るという事実
に無知で無関心な母親はごまんといる。…
(注:黒字の()〈〉、①②③、太字、下線はこっちでしました)
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「協同組合」というものの存在意義を強く感じた。
(「農協」は子どものころから身近にあったが、実家は農家ではなく組合員ではなかったし、そのうち
知った「漁協」とともに自分には直接の関係はなく、大人になっても変わらなかった。
家族をもち、食べものに関心が向くようになり、職場への配達が可能になって「生協」に加入した)
農協・漁協とも、(都市部にも規模の大きいのがあるけれど)自然相手だから数では
だんぜん地方が大いに違いない。
地方の農協・漁協は、その土地の昔からの人間関係、付き合いのせいで、組合長の
ボス的支配みたいなドロドロした雰囲気、保守的な空気が流れているに違いない、
と私は単純に思ってきたが、(昔はともかく近年の)実態はまったく知らないくせに
大いなる誤解をしていたのかもしれないと、反省した。
(一部の組合では今なお横柄なボス支配がまかり通っているのかもしれないけれど、J党や政府ほど
酷くみにくくは絶対ないと思います)
農協は農業、漁協は漁業という「生産生活」での人々の協力、助けあい、
つながりがどれほどたいせつ、必要かは、企業での労働者にとっての労働組合と
少しも変わらない。
「消費生活」をよくするための生協とも。
本の終わり「あとがき」が強く胸に響いてきたので、それを最後に引用します。
【引用】
「あとがき 売らせない日本
たとえマネーが支配する強欲資本主義でも、これに代わる制度はないと、
私たちは長い間刷り込まれてきた。…
(スペインのテレッサ市の市民議会に加わった31歳のシルビアさんの言葉)
「国民はいつの間にか、何もかも〈経済〉という物差しでしか
判断しなくなっていた。
だから与えられるサービスに文句だけを言う〈消費者〉になり下がって、
自分たちの住む社会に責任を持って関わるべき〈市民〉であることを
忘れてしまっていたのです」」
(注:黒字の()、下線はこっちでしました)