『日本が売られる』でも触れましたが、外国人「留学生」外国人「実習生」の
実態についてのルポルタージュを読み、驚くべき過酷さを知りました。
ふつう私たちは世の中の状態、出来事をマスコミを通じ、「ああそうか」
「そうだったのか」と情報を与えられるばかり。
それが事実、真実と思ってしまう。
(伝えられないことは「存在しない」「なかった」ことにされている)
その危険を、痛感した。
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日本では一般マスコミがフェイクニュースを伝えるとは(いまのところ)思わない。
しかし先日、あるドキュメント番組でアメリカのニュース専門放送局FOXの幹部が
インタビューにこたえ、こんな意味のことを言っていたのがとても気になった。
「われわれは、ある出来事(トランプの発言内容も)を
伝えるだけです。
事実なのかウソなのかは重要な問題ではありません。
そのニュースを知る人の判断に任しているのです」
一瞬、「それはジョーク?(それともフェイク?)」と首を傾げた。
が、FOX大御所は始終大真面目。ジョークやフェイクのつもりは毛頭なかった。
それだけに恐ろしかった。
「報道」は、伝える中身が事実、真実であるかどうかを、しっかり調査した上で
発表している(信頼に値する情報だ)と、ふつう私たちは思い、受け取っている。
それを、アメリカのFOXの代表者はきっぱりと否定した。
(アメリカでは「個人」「自由」が何よりもたいせつだから、フェイクだろうとジヨークであろうと、
ある「個人」が「自由」に発言、意思表明するのは人権として最大限尊重されなければならないのか。
「言い放題」「言うが勝ち」なのか。
そんなことを思っていたら、若いときは肯定的には思えなかった日本人の「静か」で「遠慮がち」、
「自信がなさそう」で「非自己主張的」なところ、一見したところ消極的な態度が
ちょっと違ったふうに見えてきた)
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その本は、『ルポ ニッポン絶望工場』 出井康博 といいます。
(グーグル画像より)
できるだけ絞っての引用ですからどうぞ、お読みください。
【引用】
「〈はじめに〉
日本の労働人口は減り続けている。…体力が必要で賃銀の安い仕事は働き手が
不足している。
しかし、「単純労働」を目的に外国人が入国することは法律で許されない。
そこで「実習」「留学」と偽って、実質的には単純労働者が受け入れられて
いるのだ。…
(北海道猿払村でのホタテの殻剥き工場の経営者の言葉)
「実習生なしでは、この加工場、いや村はもうやっていけない」…
外国人頼みの現場は、むしろ私たちが普段、目にしない場所に数多く存在する。
コンビニやスーパーなどで売られる弁当やサンドイッチの製造工場、
宅配便の仕分け現場、そして新聞配達…。
いずれも日本人が嫌がる夜勤の肉体労働ばかりである。
…
第1章 ベトナム人留学生という“現代の奴隷”
日本は今、ベトナムのような途上国の若者でも留学生として簡単に受け入れる。
その背景にあるのが、政府が2020年の達成を目指す「留学生30万人計画」だ。…
「留学生を増やすための政策」と聞けば、反対する人はほとんどいないだろう。
外国人労働者や移民の受け入れには反対でも、「留学生」に関しての異論は
聞かれない。…
政府は留学生に対し、「週28時間以内」を上限にアルバイトを認めている。…
ベトナム人留学生の増加ぶりは著しい。その大半が、日本でまず日本語学校へと
入学する。…入学金と授業料さえ払えば誰でも受け入れるからだ。
「30万人計画」の達成は、「ベトナム人」と「日本語学校」が頼みといった状況
である。…
〈日本語学校によるボッタクリ〉
(「留学」するために現地ベトナムのブローカーなどへの借金をして来日している
若者たちは、借金を返さないと担保に入れた畑や家は没収され、ふるさとの家族は
破産してしまうので、日本で“奴隷労働”を続けるしかない。
つまり、帰国したくても家族のことを思うとできないのだ)
日本語学校の実態はまったくの野放しだ。
留学生が食いものにされ、さらにはさまざまな違法行為がまかり通っていても、
行政のチェックが入ることもない。
…
第3章 日本への出稼ぎをやめた中国人
実習制度の枠を広げる一方で、政府は依然、制度の目的について「人手不足対策」
だとは認めていない。
発展途上国からやって来た若者が日本で技術を学び、母国に帰って役立てる。
そうした「国際貢献」や「人材育成」が制度の趣旨だと言い張っているのだ。
〈失踪(働き先からの逃亡)が治安の悪化をもたらす〉
だが、受け入れ先を監督すれば、実習生の失踪はなくなるのか。…失踪は本当に
受け入れ先での「人権侵害」が原因なのだろうか。…
同じ仕事をしても、手取りがほかの従業員(日本人)の半分以下だと知れば、
実習生は当然、不満を募らせ…職場から逃げ出し、不法就労に走る者が出ても
不思議ではない。
〈“ピンハネ”のピラミッド構造〉
監理団体には一応、「協同組合」や「事業組合」といったもっともらしい名前が
ついている。だが、実態は人材派遣業者と何ら変わらない。
しかも、実習生の斡旋を事業とする団体がほとんどだ。…
つまり、「監理団体」というブローカーのバックに政治家がつき、
ピンハネに一役買っているわけである。…
(もちろん)送り出し機関にとっても、実習生は“金ヅル”なのである。…
(ピンハネには官僚機構も加わっている。公益財団法人「国際研修協力機構」(JITCO)というのがあるが、ここは各省庁の役人の天下り先となっている)
実習生が疾走する根本の原因は、(職場での)「人権侵害」などよりも
実習制度が抱える嘘と建て前の数々、何よりも官民による“ピンハネ”にある。
ピンハネに甘んじて実習生を続けているより不法就労していたほうがずっと
稼げるのだから、彼らが職場から逃げるのも当然である。…」
(注:黒字の()〈〉、下線はこっちでしました)
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引用した部分は最も腹だたしかった次の三つです。
①「「実習生」や「留学生」と偽って、
実質的には単純労働者が受け入れられている」という事実。
②「日本語学校によるボッタクリ」という事実。
③「「監理団体」というブローカーのバックに政治家がつき…」
というピンハネの事実。
(これら三つのことはみんなつながっています)
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①
■単純労働を目的にする入国は日本の法律では許されない。
しかし日本は労働力が不足している。
この問題、矛盾を一挙に解決するために官僚たちは考え、編みだした。
外国人「留学生」・外国人「実習生」という言葉を使った
新たな制度をつくればよいことを。まるでマジックだ。
それだけではない。「一挙」は「両得」にもつながった。
つまり、
受け入れ側の先進国日本にとっての労働力不足問題の解決だけでなく、
「留学生」「実習生」送り出し側の途上相手国にとってもプラスになると。
「留学生」→日本政府は「留学生」たちに週28時間以内のアルバイトを認め、
労働力不足問題の解決に利用している。
(アルバイトの実態は、それがブラックなのは受け入れの民間企業が悪いのであって
…と、ブラック労働の告発があるまで放っておく)
「実習生」→日本にとっては「国際貢献」「人材育成」
■実態をマジックのように隠す、いやダマす。
外国人「留学生」外国人「実習生」という名を取り入れたこの制度。
考えついた官僚、役人はつくづく優秀な脳の持ち主だと驚いた。
(新設されたコロナ補助金さえさっそくダマし取ろうとする、次から次へと新手のアイデアを編みだす
詐欺グループと勝負したらどっちが勝つだろう?)
■実態は、外国人「留学生」のほとんどが勉学目的ではなくて、
「働いて祖国の家族に仕送り」という「偽装留学」が暗黙の事実として
公然とわかっているのに、未だ日本政府は「労働力が不足しているので…」と
言わない。
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②
■「留学生」は「まず日本語学校へと入学する。…入学金と授業料さえ払えば
誰でも受け入れるからだ」
本には〈日本語学校によるボッタクリ〉ぶりが生々しく描かれていた。
同じ日本人として非常に恥ずかしくなった。
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③
定年退職でいったん高額な退職金をとり、政府の息のかかった団体の理事長とか
理事におさまり名前だけの仕事でも給料はとり、なんせ理事(長)なんだから
そこを辞めたらまた信じられないような退職金をとる。
■前に竹中平蔵の悪口を書いたが、彼の「パソナ」という大手の人材派遣会社
なども関わっている。
(コロナで「テレワーク」「《東京を脱出》地方移住」が増えたという。
「パソナ」の一部の社員家族が淡路島に移住という地域ニュースがあった。
社員ご家族、とくに子どもさんは海があってとても喜んでいたし、地元の住民のみなさんも活気が出て
いいと話されていた。「パソナ」は株をあげた。
株はあげても「人材派遣業」というのは、昔のような肉体暴力はなくスマートに振る舞ってはいても、
ピンハネで成りたつ業種だと私は思っている。
でも資本主義社会の労働者は、どこでどう働こうとも《「ピンハネ」という言葉は使わなくても》
オーナー、経営者から搾取されていることに違いはないか)
■「官民による“ピンハネ”…ピンハネに甘んじて実習生を続けているより
不法就労していたほうがずっと稼げる…」
つまり、同じ「搾り取り」でも、巧妙な仕組みで目に見えにくい「搾取」の方が
目に見えやすい「ピンハネ」よりマシだということだろうか。