カメキチの目

2006年7月10日が運命の分かれ道、障害者に、同時に胃ガンで胃全摘出、なおかつしぶとく生きています

2022.3.15 「なりゆき」と「すでに関係してしまった」

また森絵都さんの小説を読んだ。

風に舞いあがるビニールシートという短編集の文庫本で、

なかに『犬の散歩』という作品があり、日常にありそうな話で印象に残った。

 

ここで、人生におけるなりゆきと「すでに関係してしまった」ということを

強く思った。

(私の愛読ブログには大の犬や猫の好きな方々がおられる。

なかでも「チャンスパパさん」は犬猫の気もちを人間言葉に「翻訳」される。

それが愉快で楽しい言葉で、私のような飼っていない者にもホントよく伝わり、クスッとさせられる

《チャンスパパさんは下記のように、不幸だった犬や猫をボランティアさんから引き取って育てられる

飼い主さん》

           ビーグルチビチャンス

               (チャンスパパさんのブログより)

 

物語の主人公は若い主婦。

彼女は、飼い主に勝手に捨てられたり虐待を受けたりした犬たちを殺処分する

自治体のセンター的な施設からその犬たちを引き取り(人手、財力不足から一割が限度。

ウンの悪かった九割は殺処分)たな飼い主を見つける(見つかるまでは自分が飼育)

ランティアの活動をすることになった。

(主人公はとくに動物好きというわけでもなく、それまで犬や猫を飼ったことはない。

たまたま、犬好きでそのボランティア活動を長年やっている友人に誘われて、ある日、その施設の見学を

したことがきっかけで、自分もすることになったわけだ。

もともとが真面目でやさしい性格の彼女は、昼はボランティア団体から預かっている二匹の犬たちの

散歩があるので働けず、エサ代などを調達するためアルバイトながら夜のホステスの仕事をしている

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物語を読むなかで、二つの主人公の思いが強く胸にひびいた。

一つは、なんで犬と関わることになったかの思い。

【引用】「一言でいえばなりゆきかな

 

もう一つは、

【引用】「私はすでに関係してしまったのだ

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主人公は「いつかは…」犬を飼いたいと前々から思っていたわけではないので、

なりゆき」としかいえない。

たまたま、犬が大好きで、飼い主さんが見つかるまで犬を飼うボランティアを

している友だちがいて、たまたま、ある日、誘われて…。

 

思えば、私たちの人生は(神のような絶対者から見れば)なりゆき」の連続といえる

かもしれない。

(神のような絶対者が「与えた」。だから「逃れられない」。

「逃れられない」というのは、イエス、ノー、その他、どんな選択であろうと「選択」自体からは

逃れらないという意味であり、生きている限り、何ごとかの選択行動はつきまとっているということ

なりゆき」となったきっかけを「縁」というならば、その縁、偶然を

たいせつに扱うことしか私たち人間にはできないと思う

(「たいせつに扱う」ということは、いまの場合、ボランティアになることをいうのではない。

ボランティアにならないことも。

「縁」がなかったことにする、見過ごす、通りすがっただけでも、「たいせつに扱う」ことができる

 

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「すでに関係してしまった」という思い。

とても意味ぶかい言葉だと思った。

(たまたま友だちに誘われ、捨てられたり虐待された犬たちが集められた施設に行った。

悲しそうな、悲しむことも《勝手な飼い主に》怒ることもあきらめたかのような犬たちの姿を目にし、

なりゆき」で関わったけれども、主人公にしてみれば《ボランティアになってふり返るいまは》

「すでに関係してしまった」というしかないのだろう。

《ただし正確にいえば、「関係した」のまえに「知った」があると思う。

この話の場合は「捨てられたり虐待された犬たちの集められた施設」が存在し、新たな飼い主は

一割くらいしかみつからず、九割がたは殺処分されるという厳然たる現実を「知った」こと》)

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二つのことについてつらつら、上に書いたようなことを思っていたら、何かを

知る知った」ということは、人が生きるなかでは取りかえしがつかない

(つかなくなった)こと、いうなれば「人生のキーポイント」みたいなものだと、

あたり前なことをあらためて痛感した。

(誰にもあるのだろう。私の場合、単純なくらいハッキリとしたものがある。個人の尊厳を侵す戦争、

差別などの社会の不正、不合理。

初めて知り、自覚したときは若さのせいもあり、自分自身の不正、不合理は棚あげしていることには

気づかなかった)

 

 

 

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                             ちりとてちん

 

 

 

 

 

 

 

 

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