カメキチの目

2006年7月10日が運命の分かれ道、障害者に、同時に胃ガンで胃全摘出、なおかつしぶとく生きています

2023.4.18 親の事情? 大人の事情? クソくらえ!

桐野夏生の『路上のX』という小説を読んだ。

 

       (グーグル画像より)


物語に出てくる「JK」という言葉、流行の言葉かもしれないが
どこかで聞いた。

 

小説はたまに読むくらい。

先の大江健三郎さんもその一人として書いていた『大震災の中で』という本に

桐野さんも東日本大震災について書いておられたので、読んでみようともうと

思ったわけだ。

 

この小説で描かれた「JK」とは、きわめて現代的かつ都会的な日本の風俗けど

ごくごくごく一部の現実でしかないにしても、(ロシアのウクライナ攻撃、戦争で死ぬ

などの被害を受ける人たちと同じように、ごくごくごく一部かもしれず)ほとんどの人には

関係のない世界の出来事にしても、確実に存在している。

そのことの重みをズシリと感じた。

 

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小説のエキスだけ言うと、16、7の女の子が(自殺しない限りは)生存(そう「生存」)

なければならないので「ホレ、お金をやるから…」と言われれば、「自己責任」

とわかってはいても、大人の男の性的欲望の対象になりされ)、最悪のことを

やらされ、またレイプという最悪の体験をし、身も心もズタズタに引き裂かれる。

引き裂かれたままでは生存(そう「生存」)していけないので、仲間(三人)

助けあって生きていこうとする。

 

作品は、一見、希望の見えない話、底なしのドロ沼の物語という感じがした。

 

        


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主人公たち三人は、いわゆる「普通」の家庭の女子高校生ではない。

「もっと、もっと…」という消費の欲望をあおる流行などへの欲望を満たすための

金欲しさの「援助交際」の当事者でもない。

 

主人公の彼女たち、二人はどうしようもない親たちから生まれた。

どうしようもない親たちから生まれた」という事実はウン、運命みたいなもので

それこそ自分の力では「どうしようもない」と、いまは世の中のものごとも

それなりに理解できる年齢になっているのであきらめている。

親から一方的に「生存」(そう「生存」)させてもらう以外ない幼いときから

言い尽くせないほど身勝手な言動、残虐、苛酷な体験を受けつづけけながらも、

どうにか生き抜いてきた。

親には絶望しているけれど、いまは17でまだ完全には大人になり切っていなくとも

自分で自分をコントロールできることもあり、「JK」などしながらギリギリでも

何とか生存(そう「生存」)している。

 

一人はちゃんとした「普通」の家庭に生まれ、自分たちにはない育ちのよさが

身についているのが上述の二人には感じられる。

が、16になった彼女に突然の家庭崩壊(親の都合)が起こり、続いて不幸な試練が

訪れ、自ら招いたこととはいえレイプされ、路上に放り出されたが、二人に出あい

救われる。

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大人の男の性的欲望の対象にされるということで三人は同じ、

生涯癒えることなど絶対ない

性自体は肉体のことであっても、身体と心を分けることなど出来るはずがなく、

肉体に受けたどうしようもない傷は心に刻印され、生涯、消えることはない。

 

だが著者は、この小説において子どもの性的被害という事実だけでなく、

大人を前にしては絶対的に弱い立場にあり、

性的被害のような直接の暴力、剝き出しの力によらず、

間接的にジワジワと(それとわからぬよう)社会、世の中の不正、不公平に慣らし、

そういうことへの「免疫」をつけさせていく親、大人の身勝手を、

子どもの立場にたって「告発」しているかのようだ。

(そういう感想を強くもった)

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この長編の小説を読むまで私は、その親、大人の庇護のもとでしか生存できない

子どもたちが、親である大人から(ネグレクトを含む)虐待を受け、「見捨てられた」

感覚を持ち、そんな感情を抱いたとき、当の子どもは取り返しのつかない心の傷を

いかに深く負っていることか、そこまで想像したことがなかった。

(「子どもはいつまでも子どもではない。彼らも大人になれば『親の事情』『大人の事情』がわかる

ようになる」という理屈がある。

 

なぜ、子どもの自分に親は虐待したのか、あれは虐待ではなく『親の事情』による「しつけ」。

 

親の不倫は『大人の事情』によれば「純粋な愛」のあらわれ。

 

ふざけるな!

 

戦争は『国家の事情』でござります。

 

クソくらえ!)

 

 

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                           ちりとてちん

 

 

 

 

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