(また「折々のことば」から)
孔子の言葉で、「不知為不知、是知也」という。
【引用】
「不知爲不知、是知也、
「知らざるを知らずと為(な)せ。是(こ)れ知るなり」。
自分はこういう世界、このような問題があることをこれまでずっと知らなかったのかと、
愕然(がくぜん)とすることがある。
「知らないことは知らないこととする、それが知るということだ」。
限界や輪郭を知ってはじめて人はおのれの知のありようを知る。
謙虚という徳が知恵の裏張りをなす」
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孔子の言葉そのものは、私のにぶい理解力ではすぐに呑みこめなかったので
3度も4度もゆっくり読みなおした。
でも、筆者、鷲田さんの解説でよくわかり、しかも自分に思いあたることが
大ありなので深く何度もうなずかされた。
「知らないことは知らないこととする、それが知るということだ」
自分はこういうことを知らない、まずはそういう事実に気づき、すなおに認める。
すべてはそこから始まる。
(自分自身との対話、自分相手ならすなおに認めるのに、他人を相手にしたら格好をつけよう、
見栄を張ろうとして、知らないのに知っているような振るまい、「知ったかぶり」をしようとする)
私としては、とくに解説のほうの初めの部分、「自分はこういう世界、
このような問題があることをこれまでずっと知らなかった…」に強く刺激された。
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先日、『身近な自然の観察図鑑』と『やりなおし高校地学』という、どちらも
一般向けの新書本を読み、上に書いたような思いを強くした。
(どちらもグーグル画像より)
(二冊とも、「自然」に親しみやすいよう、興味・関心を抱きやすいようていねいに、
たいへんわかりやすく書かれてありました)
二冊とも、身近な自然をちょっと視点を変えて見る、もう少し突っこんで見る、
そうすると、それまで見えなかったものが見え、感じなかったものが感じられる。
「自分はこういう世界、このような問題があることをこれまでずっと知らなかった
と愕然(がくぜん)とすることがある」けれども、知ったいまは、
知った喜びの方が大きい。
(現代はさまざまな情報が溢れている。
そのさまざまな情報の中からほんとうに自分に必要なものを「選ぶ」ということが、ますますたいせつに
なっているが、裏を返せばますます迷うということ。知らなくてもいいこともいっぱいなのだ。
人は限りある存在。「知ってよかった」とほんとうに思えることだけを選ばなければ。
しかし、個人の選択を超えた自分で選ぶことのできないこと《報道される事件や事故などのように》
知らない方がよかったと感じる悲惨な事実がある、起きている)
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二冊とも、二か所ずつ印象に深く残った言葉を紹介します。
【引用】
(『身近な…』より)
「①生き物を見ていく上でのポイントは、
どんな生き物にも「くらし」と「れきし」があるという視点です。…(自然観察→人間観察→)
新たな自分の姿の発見」
「②遠い自然は、存在していることを知っているだけでも、豊かな気持ちが生まれる」
(『やりなおし…』より)
「①もし20歳の学生ならば38憶歳プラス20歳、60歳で還暦を迎えた人は38憶歳プラス60歳なのです。
こうした見方こそ人類が地球という居場所に存在する意味であり、それを教えてくれるのが地学…」
「②日本は何もなくても、人が学んで知識をつけ賢くなって悪条件を撥ねのけて発展してきた国…
国土が狭く、地震が多く、資源がないゆえに発展できたというのは、地学を学ぶ上でも面白い視点…」
(注:「」(黒字→)、①②、太字はこちらでしました)
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■『身近な…』の①
「くらし」というのは生態、(個人でいえば)生きざま。
「れきし」は長い時間。
植物をふくめて生き物を見るとき、ふだんは空間と時間なんて意識しないけれど
あえてそういう目を持って見る、観察する。
そういう視点を持って見る。
すると、初めは生き物を通して、次には生き物のなかの人間を通じ、終わりには
私個人の新たな姿が発見につがるかもしれない。
■『身近な…』の②
「遠い自然は、存在していることを知っているだけでも、豊かな気持ちが…」
という言葉は亡くなられてからも世界中から慕われている写真家・探検家の
星野道夫さんのもの。
星野道夫さんはアラスカの大自然を愛した写真家。ここブログにも宇宙や太陽、
大自然の恵みのありがたさ、感謝の気もちを書いておられる人たちがたくさん
おられる。
ほんとうに、「遠い自然は、存在していることを知っているだけでも、
豊かな気持ち」になれる。
■『やりなおし…』の①
壮大な年齢の数え方。いっぺんに気にいった。
自分が地球と肩を並べた気がした。
■『やりなおし…』の②
日本という国は確かに山が多く平らなところは少ないし、資源は「少ない」
というよりか「ない」の「ないない尽くし」。多いのは地震など災害くらいだ。
しかし、この特徴(特性)を「負」(マイナス)ととらえるのではなくて逆手にとり
「知識をつけ賢くなって」「ないゆえに発展できた」という。
(「逆転の発想」。これも視点の転換の問題。「地学を学ぶ上」だけの面白い視点ではありません)