カメキチの目

2006年7月10日が運命の分かれ道、障害者に、同時に胃ガンで胃全摘出、なおかつしぶとく生きています

2020.9.4 人間として生まれ死ぬこと

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 長く生きているといろんなことを感じ、思い、

考える。

 

 そういっても、自分ひとりの世界を生きてきただけ

なので、一匹のアリと何ら変わらない(と思う)

 自分の世界しか知らない。 

感じ、思い、考えるといっても、自分だけの世界の範囲にとどまる。

「自分」しか経験できない。 

 

 読書(に限らない、想像力さえあれば)は、いつでもどこでも

きわめて簡単に、自分ひとりの世界を打ちやぶり、

未知の世界を探検、経験させてくれる。

読むものも読み方も自由自在に選べる。そのことがまたすばらしい。

(私は行ったことないが「いまイギリスにいる」とツレは言う。推理小説が好きで

よくヨーロッパに行っている。物語とは切り離せないが、事件の推理とは別の背景

描写。背景となるその土地だけの風俗・習慣など、暮らしがさりげなく感じられ、

とてもおもしろいと言う)

 

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 ところで、

 人生の終焉が近くなったいまも、ときどき、

「今・ここ」に自分が生き、存在していることが

不思議に感じられる。 

 

「何で生まれたのだろう?」

「生まれたところがどうしてここだったのだろう?」

「自分は何でこんな人間なんだろう?」…

と、頭をしげることは子どものころからあった。

誰でもそうだったのだろうか。

 

 自分という個人への疑問が、成長するにつれて

社会(社会を超えて自然)へ広がった。

そして、また自分へ還る。

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 先日、私たち日本人そっくりの顔だちをした

東南アジア奥地のある人たち(家族)暮らしを描いた

本を読んだ。

(ネパールの近くなので、前に記事にした『ジャパニ』が重なりました) 

 

 その本は『生命の森の人びと アジア・北ビルマの山里にて』という。

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                         (グーグル画像より)


(「ビルマ」はいまは「ミャンマー」と呼ばれることが多いですが、著者には

こだわりがあり、昔ながらの「ビルマ」を使っている)

「カチン」(族名)と呼ばれる人々の生き方は、まさに「生命の森の人びと」。

主の焼畑農業と副の狩猟採取で生きている。

あるとき、家族のよく知っている少年がマラリアに罹って死んだ。

この家族の子どもたちにとっては、その少年は兄弟のように親しかった。

悲しくてやりきれない子どもたちに、父親は語る。

(父の言葉は【引用】の「」の部分です)

 

【引用】

死者は土に還る

生きとし生けるものはすべて、いつかは土に還る。

生は死にいたり、死は生をつちかう大地にとけこみ、

つちかわれた生はいずれ死にいたり…と、めぐりめぐっている。

そのようなめぐり、循環が大むかしから、山地の自然のなかでくりかえされて

きているのだ。

 

「死んだ人は山の土になるんだよ。だから、あの世は山のなかにあるというのは

たしかにそうだ。

目には見えないけれど、心の眼には、山の大地のなかでこの世とあの世が

つながっているのが映る。

この世の山も、あの世の山も、同じひとつの山の二つの面なんだよ」

 

カチンの人びとが信じる山のなかのあの世(祖霊の地)は、

ただ単に頭のなかに描かれたイメージではない。…

実感をともなう信仰の世界なのである。

 

乳を共にする

「乳を共にする、という言葉を聞いたことがあるかな?

母親の同じおっぱいを吸って大きくなった兄妹姉妹の間柄、というのが

言葉そのままの意味だけど、…さかのぼっていけば、神話にもあるように

わしらカチン人の最初の先祖は…だからカチン人みんなが、乳を共にする、

というわけなんだ。…

もっともっとさかのぼって、人も獣も鳥や虫や魚も草や木もみんな、

天地の初めに生みだしたニンゴン・チュヌンとプンガム・ウォエシュンという

神々から生まれて、この世界中にひろがり増えていったんだから、

乳を共にする、根っこを共にすると感じてもいいんだよ。…」

 

 何で生まれたとか、生まれたところがここだった

とか、自分はこんな人間とか…そんなこと、

どうでもいい。

 みんなが生まれ(創られ)私も生まれ(創られ)

みんなも私も死ぬ(土に還る)。

 これ以上の過不足ないもの、ことがあろうか。

 

 

 

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                          ちりとてちん

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