カメキチの目

2006年7月10日が運命の分かれ道、障害者に、同時に胃ガンで胃全摘出、なおかつしぶとく生きています

2023.12.1 西瓜泥棒

今日は「西瓜泥棒」という話です。

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西瓜泥棒

 

ある夏の夜、農家の婦人が幼き子を連れて我が家へ帰る際、

畑に熟した西瓜が坊主頭の並ぶがごとく連なっているのを見た。

  (グーグル画像より)

 

月は澄み、まるで昼のようではあったが、人通りのない、夜中の田舎道のこと、
婦人はふと良からぬ心を起こした。

たくさんある西瓜の一つばかりを盗ったとしても分かりはしまい。

 

そう思った婦人は子を見張り番に立たせ、畑の中に入って、一番大きな西瓜に
手を伸ばそうとした。

しかし、なんとなく良心がとがめるような気持ちがして、止めておこうかとも思ったが、

誰に知れることもないからと再び手を伸ばそうとした。

念のためにと、見張り番をさせている子に声をかけて

「誰も見ていないか」と聞いたところ、子どもは言った。

お母さん、大丈夫だよ。
お月様の他は誰も見ていないよ

 

            


この一言に婦人は震え上がるほどに

良心の痛みを感じ、
恐怖を抱きながら子のそばに駆け寄った。

「おお、よう言ってくれた。
誰も人は見ていなくても、神様には
見られているのだった。

浅ましい出来心から
取り返しのつかない罪を犯すところだったが、お月様が見ているとお前が言ってくれたおかげで
この罪を免れた。お前は天の使いである」

そう言って婦人は子を抱き上げて、接吻した。

(「道を究める」というウェブサイトから引用させていただきました)

 

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お母さん、大丈夫だよ。お月様の他は誰も見ていないよポイント。

 

誰も見ていない(知らない)」「少しだけなら」「大したことじゃない

が命取りになる。

 

著者はいう。

悪魔との戦い、つまり「悪事への誘惑」との戦いは最初が肝心」だと。

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この話と同じではなくても、似たような話を子どものころ聞かされた。

歳を取り、いわれていることをあらためて強く感じる。

 

最初が肝心」ということを。

(「鉄は熱いうちに打て」といわれる。

ここでの「最初」は「誘惑との戦い」についてのことだけど、私はまた

大事なことは《人生の最初》に心に沁み込むほど、イヤになるくらい聞かなければならないと

強く思った

 

誰も見ていない」ということを。

(他人は見ていなくとも自分は見ている《自分の心はごまかせない》。

神や仏、天も見ている。

だが、自分の中に神などが住んでいないと、住んでいても人間は弱いから

強い誘惑に負けてしまうことがある。

私なんかしょっちゅうだ。誘惑に負けた弱い自分を屁理屈をこしらえ言い訳する)

 

少しだけなら」ということを。

(どんな戦争も「少しの犠牲は仕方ない」で始まる。

数えきれない人々が虫けらのように死んでも、これほどの犠牲が出るとは思わなかった、

「想定外」だったと言い訳する。

京アニ」事件《36人が死んで33人が重軽傷》で放火した加害者は

「これほど多くの人が死ぬとは思っていなかった」と裁判で述べた。

《少しの人なら焼け死んでもいいと思ったのだろうか》

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ところで、昔ならいざ知らず、いまの時代・社会に、

この素朴でわかりやすい話を、誰もが「そうだそうだ、その通り」だと考え

思うだろうか?

 

道徳とか倫理のような人の心、内面の問題は、結局のところは

宗教と根を同じくするのではないかと思う。

そうする、そう感じ、そう思い、そう考えるのが「正しい」と信ずる

(「大事なことは《人生の最初》に心身に沁み込むほど、…」と先に書いたが、

宗教のように信じるということの大事さをいま強く感じている。

 

誰でも大人になったら否でもさまざまな価値観の渦に巻き込まれてしまう。

前回の「群盲」の話ではないけれど、どんな考え、思いにも一応の理屈があり、事実を反映している。

価値観はそれぞれ、相対的だから多様であり、私たちは迷う。

子どものときからの「素朴でわかりやすい話」は、世の中は複雑だ、生き抜くのはたいへんだと

言い訳ばかりしている卑怯な私を救ってくれる。

「ああ、こういう世界があった、忘れていた」と思い起こさせてくれる)

 

お月様の他は誰も見ていないよ

 

人間は忘れる。

ときどきは月を見上げ、この話を思い出してみたいと思った。

 

 

 

 

 

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                             ちりとてちん

 

今日の俳句

子にみやげ なき秋の夜の 肩ぐるま  能村登四郎

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