カメキチの目
『わるいやつら』という本を読んだ。
私もけっこうわるいやつかもしれないけど、この本に書かれているやつには負ける。
たえず新手をあみだすオレオレ詐欺…
いわゆる貧困ビジネスなどなど…
数えればキリがありません。
ほかの人を苦しめ、泣かし、カネ儲けしようと考え、実行するやつ。
こういうサギは、ニュースばかりかサスペンスドラマにもよく登場するのでだいたいは知っていたが、この本で初めて詳しく知った。
すごく勉強になった。
著者は宇都宮健児さんという弁護士だ。東京のみならず、全国の弁護士会長も務めたほどの方である。
本には、どういう“縁”でサラ金などに関わるようになったかを、ご自身が述べておられ、それにも私は惹かれた。
リーマンショックなどの経済不況で勤めていた企業を簡単にクビにされ、宿泊するところさえなくなった人たちのための「年越し派遣村」(2008年暮れ)の村長でもあった(今は名誉村長)。
サスペンスドラマは緻密な検証を重ねて作品をつくられるらしい。
ところが、日本の現実はドラマをしのぎ、想像を絶するような悲惨な事件が起こっている。
あまりに酷い、酷くはなくとも確信的に罪を犯すやつがいる。捕まっても、ヘラヘラ…。
そういう実態をみるにつけ、ずっと前にどこかで聞いたことを想起する。信じたくはないが、「ごくごく…少数でも、本質的に自分のしたこと(罪)を悔いることのない人間がいる」
こんどこれを読み、ますます、ゆう鬱な気分とストレスが高まった。
が、こんな日本をどうすればいいかということも述べられていたので、少し軽くなった。
宇都宮さんは、こんな日本、首都東京をほんの少しでもよくしていこうと、(無謀?にも)都知事選に立候補された。
もちろんすべったが、立候補するには供託金都知事選には300万円がいる。
300万円用意できなくて、反原発や環境問題をかかげた「緑の党」は立候補できなかったそうだ。
宇都宮さんは法律家なので知識としてはあったが、供託金制度が選挙権のもう一方、被選挙権という人権の壁になっていることを、この選挙を通じて実感したという。
ちなみに、フランス、ドイツ、イタリアなどでは0円です。供託金制度のあるイギリスでも庶民が出せる額です。
よく「護憲」「改憲」ということが叫ばれるが、そもそも日本で、いかに憲法でうたわれていることが現実とかけ離れていることか。
理念で「護憲」をいうより、憲法に書かれている人権をどうやって現実化・具体化するかをしんけんに考えなければならない、そして実行しなければならないと宇都宮さんはいう。
たとえば、いちばん切実な生活していくこと。憲法25条の生存権規定の具体化は生活保護であるが、日本では本来うけられるのに2割の人しか受けていない。
ちなみにフランスなどヨーロッパ諸国では9割。
学校教育で、生活保護を受けるための手続き、申請のしかたを。働くことでは労働組合のつくり方、団体交渉のしかたなど。具体的に教えなければならない、と宇都宮さんは続けて述べる。
私は、目からウロコが落ちた思いがした。
日々、生きていく中で、「なんかおかしい?」と感じることは多々ある。
ふつうは「そんなもんなのだろう」と、わかったふうな顔しているが…。
まあ私的なモノゴトならばそれですむにしても、公的というか社会的な場合は、「自分がその人だったら…」と考えてみて損はないと思う。