カメキチの目
『物語 食の文化』を長くかかって読了した。
その方の読書紹介と感想だけで自分が読んだような気にさせてくださる読者がおられ、刺激されて読んだものです(「爽風上々」さん、ありがとうございます)。
新書本で一般向け。ですが中身が濃く、新書版になる前は大著だったに違いありません。
「食」は生き物の本能。というか、生きることそのもの。
動物は生きるためのほとんどの時間とエネルギーを「食う」ことにあてている。
人間は、食うことから解放され、つまり少し「余裕」がうまれ、「文化」というものを創造するようになった。「食」そのものも文化となった。
『般若心経』に「空即是色」とあるけれど、まさしく
「生即是食」だ。
ブログでも、「食べる」「料理」は大繁盛(私も大好き)。写真だから食べられないが、みるだけでとても楽しい。
楽しいが、みるだけでは腹はふくれない。残念です。
本には、ありとあらゆる「食」に関することが古今東西にわたって述べられており、とてもわかりやすかった。
ちゃんと食物が生産、供給されるようになり、空腹に悩まされなくなるのに、先人の血と汗と涙がどれほど流されたことか…。
食うだけの、与えられっぱなしの私。
消費するだけの人間は、「食」を具体的に知ること(いまの場合は読むことによって)、はるか遠い昔からの食うための営み、その努力に必死だった人間たちの苦労を想わなければならない。
食べるとき、これまで以上に姿勢をたださなければいけない。
「いただきます」という合掌に、もっと心をこめなければならないと思った。
単に手を合わすだけでなく、いまから食べようとするもの、食材となったいのち、料理してくれた人をイメージし感謝するだけではなく、その食べ物をいれる器、箸、スプーンなどをつくった人、このような食べる作法を編みだしてくれた人…までイメージし、感謝しようと思った。
ところでその本は、私たちがいま当然のように食べているものが、どうしてそうなったか、そうであるのかを、気の遠くなるような人類の登場から解き明かしてくれるのです。
たとえば食材としては大きく植物と動物がありますが、先史時代はどうしていたか?米や麦など穀類は人間の主食となってだいぶん経ちますが、原産地はどこか?どう生えていたか?それをどう改良してきたのか?
野菜・果物・香辛料・肉…飲み物などはどうだったか?
煮炊きなどの加工、調理は?食器は?食べ方は?
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人間は他のいのちをいただいているから、「食」の多様性は生物多様性と深くつながっている。
先にナマコなどの生物多様性のたいせつさを書いたが、それは「食」の多様性を守ることにもなるわけだ。
でも、いつまで米やパンを食べておられようか?
ロボットやAIがハバを利かすような社会になったらどうなるのか?
そんなことより、「子ども食堂」で空腹を満たし満面の笑顔になる子どもたちのほうが気にかかる。
世界には、戦争で安心して食べれない、天候不良や自然災害のもたらす飢餓で苦しんでいる子どもがいっぱいです。
背景にはさまざまな複雑な問題が絡んでいて、解決にはたいへん困難がいるのでしょうが、人類の叡智が集まればこんな悲劇は長いながい人類の歴史でとっくに解決されていると私は思う。
「長いながい人類の歴史」というのは錯覚で、地球の歴史からみれば人類の登場なんかはついさっき。
飢えの解決の前に滅亡という筋書きをたどるのでしょうか…?