カメキチの目

2006年7月10日が運命の分かれ道、障害者に、同時に胃ガンで胃全摘出、なおかつしぶとく生きています

2021.4.6 あずかりやさん

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『あずかりやさん』  大山淳子 

という小説を読んだ。

 

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                       (グーグル画像より)

小説はすばらしいとは思っても、自分の感性にとっての当たりハズレがあるので

よほど「読みたい」という気が起きないと読まない。

これはツレが珍しくすすめてくれたので読んだ。

読んでよかった。

おもしろかった。

 

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「あずかりや」というのは、何でも(物だけでなく人間も預かる店だ。

(「預かる」ということに特化した便利屋さんという感じ)

1日100円、何日・何カ月・何年でも可。ただし前払い。

約束の期限内に取りにこなければ処分する。

(「処分」といっても人を殺したり、その遺体を捨てたりするわけではありません)

店主は物腰が柔らかくて誠実な視覚障害の若者である。

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「あずかりや」という、商売が現実にあるのかないのか知らないが、

あればおもしろい、あれば助かる人が結構いるだろうと思った。

 

現実にはなくても小説は、想像、虚構で可能にする。

続けて思った。「小説はすばらしい!」

 

 

本は「あずかりや」をめぐる心あたたまる物語がいくつか編まれていた。

それぞれの話は読まれる方のお楽しみにあずからせていただいて、私の心に深く

響いた言葉だけ三つ紹介します。

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【引用】

① 「ラブレター」より

入院中に突然いなくなる子がいる。

昨日まで一緒に本を読んでいた友だちがいなくなっても、おとなたちは説明しないし、

わたしたちも聞かない。

死はわたしたちにとって明日のことかもしれないのに、死そのものは伏せられるの。

死んだ姿や、家族をなくして悲しむ人の姿もそこにはない。

病院ってそういうところ。

ある日ふと消える。それが自然のことのように思えてくるの。…

だって当時のわたしは、病気ではない自分を知らなかったし。

わたしもいつかいなくなるのだと、ぼんやりと思っていた。…

 

② 「ツキノワグマ」より

 「寿命が来る前に捨てるって、人として、間違っているんじゃないかと思うの」

相沢さんは地球環境などと小賢しい言葉を使わず、いつも感性でものを言う。

そこそこ真理をついているから、あなどれない。…

 

③ 「高倉健の夢より」

当のマンションの住人は金周りが良いらしく、まだ使えるものがたくさん捨てられる。

管理人はそれが気にいらないらしい。

人は絶え間なくものを買い、絶え間なく捨てる。

無駄遣いが経済を回し、この国を支えていると思うと、空恐ろしい思いがするよ」…

 

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白血病、他の小児がん、世間にあまり知られていないさまざまな病気で

長い期間を病院で過ごさなければならない子どもたちがいる。

「いのちの尊さはみんないっしょ」「いのちを長さで比べられない」とは言っても

子ども、若い人は生きてきた時間が少ないという事実を自分が老人だからか)

どうしても強く感じてしまう。

現代のオリンピックのあり方に大反対でも池江璃花子さんのニュースを聞いたりすると複雑になる)

 

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②、③

(注:③の「高倉健」というのは、有名な映画スターにちなんでそう名乗る、この物語の登場人物名)

「もったいない」という言葉を発明した昔の日本人はすばらしいと思う。

そんな日本の文化が少しはわかってきた気がする。

(「わびさび」という日本の美意識は「もったいない」から来たのでしょうか?

もったいないと感じる気もちがなければ、貧相、不足のなかに心の充実・美を見いだそうとはしない

外国にも同じような文化があるのだろうか?》)

  

モノが豊かな世の中になってから、まだまだ使えるモノを、ちょっと修理すれば

使えるモノを、私たちは平気で捨てるようになった。

モノは溢れるようにある、という現実があるから、もったいないとわかっていても

そうしてはいけないとわかっていても捨てる。

(しかし「持続可能」という考えが行きわたり、ゴミも分別、リデュース・リユースリサイクルが

ありブックオフ」や「メルカリ」などの商売もあります。

また、生活のため農畜産などの「もったいない」《価格維持のため》ことをしなくてはならない

ジレンマをなくすため、生産者と消費者とを結びつけてそれぞれの必要を調整する仕事や、

車などの「シェア事業」もあります。

これらの取り組み、事業は、形はさまざまでも、みんな「もったいない」心から生まれている)

 

 

「地球環境」「持続可能」…と言わなくても、相沢さんや管理人さんのような

自然に湧きあがるような感覚を尊ぶ。

(仏教の言葉に「自灯明法灯明」があります。自分を灯明《道しるべ》とし、法《自然》を灯明

《道しるべ》としよう、ということ。自分の心の奥底から湧いてくるものはたいせつにしなければ) 

 

 

 

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                              ちりとてちん

 

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