カメキチの目

2006年7月10日が運命の分かれ道、障害者に、同時に胃ガンで胃全摘出、なおかつしぶとく生きています

2020.12.11 『ぼくが世の中に学んだこと』

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『ぼくが世の中に学んだこと』鎌田慧 という本を読んだ。

 

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著者、鎌田慧さんはもう80代のルポルタージュ作家。

 

ルポルタージュは「事実」の重みを強く感じさせてくれる。

若いころ読んだ著者の『自動車絶望工場』は、強烈な印象を与えた本だった。

(この本は、著者が愛知県豊田市トヨタ自動車の本社工場で6か月間の臨時雇い

《「季節工」といい、主に田舎からの出稼ぎ労働者》で実際に働く経験したなかで

感じ、思い、考えたことを記録したもの。

『ぼくが世の中に…』には、トヨタ自動車のほかに新日鉄(八幡工場で鉄の生産)

旭硝子(下請けの工場でテレビのブラウン管の生産)でも働き、そのときのことも

書かれていた

 

『ぼくが世の中に…』は、遠く青森から町工場で働くために上京(当時は高卒。

のちに自分の欲するものを学ぶために大学に進学)、その最初の工場を皮ぎりに

さまざまな人たちと出あい、その人たちの生き方・人生から、とてもだいじな多く

を学んだということを著した本だ。

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てっていして働く者・生活者・庶民の側の眼から世の中をみる。

 

資本家・経営者・オーナー・CEO…から命令・采配され、支配され、(労働対価

としての賃金だけではなく身心の一部、もしくは全部を)搾取される労働者、

原発という国策を雇用の確保につながるだけでなく国や電力会社から膨大な

カネが入るという、過疎の弱みにつけこまれた地方自治体の住民。

(古い言葉だが「平民」の)悲哀が鎌田さんの本にはつぶさに述べられている。 

 

【引用】

「月に石をとりにいく技術はあっても、人間を救うために技術は使われてない」

と三井三池の犠牲者の家族はいった  

 

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話が変わりますが、

 先日、私の住んでいる地方のテレビ局がニュース特集で「非正規地方公務員」の

問題点を取りあげていました。

(役所という身近なところの大きな差別問題《「差別」と考えるか否かの議論は

ありますが》に目を向けたそのテレビ局に、「テレビの役割」を果たそうという

意欲を感じた)。

 

いまや(自治体により多少の差はあるものの)地方公務員の3割前後が非正規職員

だとのこと。

アルバイト、パート、臨時、嘱託、契約、派遣…などの非正規職員が正規の職員と

ほとんど変わらぬ仕事をしているのに賃金は大幅に低くく(民間では「同一労働

同一賃金」がいわれているのに)、福利厚生からは除外(もしくは差別)され、

必要がなくなればいつでもリストラ(体のいいクビ)されます。

 

こういう実態はしかたない、やむを得ないという理由に、たいていの自治体は

決まって「カネ」(財源)、財政難、お金の不足をあげる。

しかし、ほんとうにそうでしょうか?

ほんとうにお金がないのだろうか?

 

ないのではない(と私は思う)。

「ない」「欠けている」のは「やさしさ」とか「思いやり」とか「共感」とか

いろいろな言いかたがあるけれど、つまり「愛」といわれるもの。

それがあれば、お金なんかどうでもなる。後からついて来る。

よそから引っぱってくればいい愛のあるものならば、現代ではネットを利用し

クラウドファンディングいう方法でお金を募集できる)。

 

世の中には私たち庶民がおどろくようなたくさんのお金が眠っていることを、

時々の事件で知る

つまらない、どうでもいいこと(もちろん、こういう価値観は個人によりいろいろ

あるけれど)に使っているお金を、ほんとうにたいせつな、必要なことにあてれば

回せばすむ。

(そのニュース特集でも触れていましたが、《先日もNHKスペシャルであった》

「ひきこもり」という《たしか20年以上も前に問題視されてきたが、当時はまだ

個別的で一般的に広がってはいなかった》社会的な問題は、代社会が明らかに

病み、「愛が欠乏」していることのあらわれだと思う)

 

「非正規」はおかしいと思う。あたり前ではない(それとも「正規」の方が

おかしい、あたり前ではないのだろうか?)。

 

「男女平等」「環境配慮」「持続可能」…が目ざされ、「セクハラ・パワハラ

「環境汚染」…が罪となったように、私は法や制度でなくすことが可能だと思う。

 

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 鎌田慧さんの本を読んで、おかしい(?)ことは

「おかしい」と声をあげることのたいせつさを強

く感じた。

しかし、その前におかしさに気づかなければならない。

あたり前のような顔をしている「おかしなものごと」に気づかなければならない。

 

最後に、

「人材派遣」というのを今では私たちはあたり前のように受けいれているけれど、

鎌田さんは言う。

【引用】

いまや労働者を人間あつかいしない収奪のシステム「人夫供給業」を復活させて

までして、大企業は高生産と高収益を図っている。

かつては鉄鋼業や造船業でおこなわれていた「臨時工」と「賃工」のシステムが、

いまは自動車やカメラやIT産業、さらには流通産業などにとめどもなく浸透…

大正時代に、「請負職夫」とか「人夫」といわれた存在が、いまは「派遣労働者

といわれるようになっただけのことである

 

 

 

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                          ちりとてちん

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