「爆買い」という言葉に惹かれて読んだ。
(すこしは中国の人々のことがわかれば…くらいの軽い気もちでしたが、いまは「爆買い」は不可能。
コロナ後の世界では「爆買い」は死語になるのでしょうか?)
本は、長く日本で暮らしている中国人著者の、とくに日本人と比較して思い、
考えた「中国人論」になっていた。
国籍や民族などの違いを越えた人間のあり方、生き方を考えさせてくれた。
(親しみやすく「爆」が似合わないステキな本だった)
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前半に中国人(に「多く見られる」といった方がよい)の特徴を四点に絞り、
後半は(中国人だけではない)人間一般について、
強く印象に残ったことだけ書きます。
(きょうの記事は前半。後半は次回の記事)
① 「なぜ声が大きいのか?」
中国人は「大」を好むと述べられていた。
(「好きずき」の問題。「声」だけではなく、古い時代から女性も大柄、ふくよかであることが
好かれるとのこと。
古代の日本でも大陸文化の影響を受け、高松塚古墳などに描かれた官女はふくよか。
もっと後代の「平安美人」もふっくら。
もっとも現代は、欧米や日本の「やせ好き」「痩身好み」文化が伝わって変化しつつあるらしい)
「躍進」、「革命」をわざわざ「大躍進」「(文化)大革命」と呼ぶのも
「大」好きのためらしい。
(「熱烈歓迎」を初めて聞いたときは、中国って何と大げさな…と感じましたが、「熱烈」も「大」と
似たようなニュアンスがあります。
いいことを大きく表現するのに、言い過ぎはないと思うので納得)
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② 中国人の「大」はおおらかで外向的な性格。
「おおらか」というのは、小さいことに悩んだり、こせこせしない。
それはよいが、いい加減にもつながりやすい。
(「いい加減」というとよくない印象がありますが、
「バランスがよい」「よい加減」とみればまた違う)
日本人は勤勉で真面目で誠実なので、日本の鉄道は発着時刻がとても正確だ。
遅れることは滅多にない。あった場合、たとえ原因が鉄道側のミスでなくとも
「すみません」と謝ったり、対応が丁寧でサービス精神があふれている。
(中国ではそういう場合、原因が他にあろうが自分《鉄道側》にあろうが、起きてしまったことは
「仕方がない」とあきらめ、「くよくよしない」と早く切りかえ、前向きになる)
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③ 「塞翁が馬」という人生観、処世術が諺がある。
何が幸いし、なにが不幸を招くかわからないので、少しの不運や些細な不幸に
一喜一憂する必要はない、と今でも多くの中国人が考えている。
(でも、これはとても大事なことだと、著者は強く述べる)
「今でも多くの中国人が考えている」ということは、
中国社会にはこういう空気が流れていることを意味し、
それをいちばん吸いやすい子どもは小さいときから、知らずしらずのうちに
「失敗」を恐れない精神を涵養し、「わざわい」を転じて「福」となす心を
養っている。
(もちろん何でもバランスがたいせつで、行きすぎれば「無鉄砲」「慎重さの欠乏」になる)
物事が自分が望むようにうまくいかなくても、それを「失敗」ととらえない。
(自殺率が圧倒的に日本より低い)
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④ 「なぜ食べきれないほど料理を注文するのか?」という話があった。
(声が大きいのは知っていたが、これは知らなかった)
この部分は「面子にこだわる中国人」、「面子もいろいろ」、中国も「恥の文化」
だということで、「面子」にはページがいっぱい割かれていた。
ここは引用します。
【引用】
「・中国では、人前で叱られて面子を失うことに、日本人が想像する以上の屈辱があることを
覚えておいてください。…
・面子へのこだわりを理解しないと、「中国人は自分の非を認めずに自己主張ばかりする」と、
とらえられてしまうことでしょう。…
・中国では、煙草を出して、周りに勧めずに自分だけ吸うのは、「格好悪い」ことで、「けちなやつ」と
軽蔑されることなのです。…
・この再びお礼を言わないのが、中国流。この点が、日本とはずいぶん異なります。日本人はよく
こう言います。「中国人は恩義を知らないよ。この前あれほど助けてあげたのに、今日会ったら
何もなかったように感謝の言葉一つもないんだから」…
・(中国では)すぐにはお返しをしません。また日本人のように、会うたびに、…お礼を言う習慣も
ありません。…心の中で覚えていて…(機会があるときに)必ず恩返しをするのです。…
・礼をするなら全員に
例えば、プレゼントについてです。その場にいる誰にあげなくても、とくに問題はありません。
しかし、もしみんなにあがたつもりで、その中の一人だけにあげなかった場合、ものすごく恨まれます。
もちろん、これはその人の面子を失わせてしまったからです。…
・中国人の食べ物に対する浪費も面子のためです。食べ切れないのに、自分のおもてなしの「真心」を
示すために、多くの料理を注文します。食べ終わったら、持ち帰りを一切せず大手を振って立ち去る人が
面子があると見なされています。…」
(注:黒の・()はこっちでしました)
ここを読んで、「爆買い」の謎がちょっとわかった気がした。
つまり、中国の人たちはお土産を、身内はもちろん、近所の人、職場の同僚、
友人・知人、大勢の人に買うので爆発的な買い物になるわけだ。
それもケチケチした人間と思われたくなく、太っ腹と思われたいので、「過ぎる」
ほど買い、「爆買い」になってしまうのか。
(でも食べ切れないのに料理を注文するのと同じで、相手が欲しいかどうかにお構いなく買うのは
どうなんだろう?
世界的な資源のムダ遣い、節約の高まりで、現代では変わってきているようですが、まだまだ
「食べきれないほど料理を注文する」習慣は残っているとのこと)
〈オマケ〉
本のどこかに(もともとは孟子の言葉という、著者のもっとも好きな言葉)、書かれていた言葉
【引用】
「達すれば則ち兼ねて天下を済(すく)う、窮すれば則ち独り其の身を善くす」
(出世できれば、天下を救うといったような大きなこともするが、出世できず、不遇になったとしても、
ただ自分自身の人生を善く生きればいいのだ、という意味)の言葉。
「不遇になったとしても、ただ自分自身の人生を善く生きればいいのだ」
熱烈に気にいった。