お名前を知って以来、ずっと気になっていた方(いまは故人)がおられ
最近、その方の本を読んだ。
半藤一利さん。
『歴史と人生』という新書。
2018年出版なのでそれほど古くはなかった。
折々の重要な(結局は個人の人生に影を落とすけれど直接は目に見えにくい)社会・政治の
問題について言及されたものだった。
亡くなられて1年以上になるので、ロシア、プーチンがしかけたウクライナ戦争
(宣戦布告はしていないので「戦争」とはいっていないが戦争とどこが違う?かつての日本の侵略、
「〇〇事変」みたい)の現実は見ないですまされたけれど、生存なさっていたら、
どう思われただろう。
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「プーチンが悪い」「プーがいけない」と私も責めるけれど、
プーチン→ロシア軍(幹部→一般兵士)という命令系統、流れがあっても、
直接コトに当たる、人を殺すのは一般兵士、下っ端の兵という現実。
(最後はたいてい水戸黄門的に正義が勝つので、心配しながらも安心して観ておられるサスペンスに
国家権力による犯罪を描いたものがあり、ゾッとすることがある。
先日、テレビで昔の映画『ペリカン文書』を観た。
「スマートな」殺人《「暗殺」ともいう》が行われ、人が消される。
事件そのものも「存在しなかった」ことにされる。
暗殺者は人殺しのプロフェッショナル。怖い。恐ろしい。
しかし戦争は、プロではなくても《「傭兵」「志願兵」は別にして》殺人などしたくない平凡な市民が
徴兵により下っ端の兵士となり、上からの命令を受け、無差別に民間人を殺さなくてはならない。
スマートな暗殺であろうが、残酷で野卑きわまる戦争であろうが、殺人は怖い。恐ろしい)
虐殺、虐殺まがいのことをしてしまった下っ端の兵士だって、
先の自分のことを考える。
(いつかはわからなくても、必ず終結するこの戦争)
民間人を殺戮した罪(たとえ意図したことではない、過失であったとしても)を戦争裁判で
問われるならば、いっそう殺戮がなかったことにしよう、そのため物的証拠は
消し去ればいいと、人々の遺体を焼却しようとした。
(そこまで人間は狂える、悪魔になれる。
戦争という状態は「食うか食われるか」、「殺すか殺されるか」、恐怖が支配する世界なのだ。
「狂気」は生まれて当然)
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私はプーチンのような人物が大統領になる不思議、ロシアという国の政治体制が
前々から気になっていた。
(「民主主義」「自由」を標榜するアメリカもトランプのような大統領が生まれたし、
どこでもその国のリーダーを見れば、《騙されやすさを含めて》「民度」がわかるのだろう)
「ウィキペディア」によればロシアの政治体制について次のように書かれていた。
【引用】
「ソビエト連邦時代の共産党一党独裁制が放棄されて多党制に基づく選挙が行われる
ようになったが、2003年以降は事実上ウラジーミル・プーチン大統領率いる与党
複数政党制や選挙は一応存在するが、選挙から反体制派候補を排除するなど
プーチン体制に有利な政治制度が構築されており政治的意思を表明する機会に乏しい。
「法の独裁」による統治を目指す強権的体質が内外から批判されており、…
民主主義指数は、世界134位と後順位で「独裁政治体制」に分類されている…
また国境なき記者団による世界報道自由度ランキングも149位と後順位である」
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社会の組織体は、大は国家から小は会社、家にいたるまでさまざま存在する。
そして、それに属さず生きることは人間にはできない、不可能だ。
「不可能」「できない」からこそ、自分が属す社会、日本国の平和、
政治をしっかりと視なければならないということを、この本を読み、
あらためて強く思った。
(どなたの心にも届く、きわめてわかりやすい話です。是非、お読みください。
前置きが長くなってすみません)
【引用】「〈守れないという、リアリズム〉
こんな狭い国土で、しかも国境線がやたら長い国土で、真ん中に大山脈が走っていて、
平野部は海岸線にしかなく、そこに原子炉が50以上もある。守るにこんなに守りづらい国はない。
いや、守ることなんてできない。それが現実なんですよ。
…
〈「集団的自衛権」とは要するに〉
集団的自衛権なんて、「自衛」という言葉が入るから皆が錯覚していますが、
あれは自衛でもなんでもありません。
内田樹さんの言葉を借りれば、集団的自衛権とは、「他人のケンカを買って出る権利」なんですよ。
他人とは誰かと言えば、もちろんアメリカのことです。
アメリカの国益のために、日本はケンカを買って出て人を殺したり殺されたりする必要はまったくない。
それこそ、戦後70年近くで築いてきた国際的信頼という最大の国益を失うわけです。
…
従軍慰安婦問題とはつまり、軍は関与していません、官憲は関与していません、
業者が勝手にやったことです、だから、日本国はこれに対して責任がありません。
政府がそう言うと、国と気持ちを直結させている若い人は、「そうだ」と思ってしまうんです。
そうではなく、あの当時、女性に残酷なことをしたのは紛れもなく日本人であり、
実態として利用したのは日本という国家だったんですよ。…
根本は、「苦しんだ人への想像力を持てるか」なんです。
「それを相手に届くように示せるか」なんです。ヒューマニズムの問題なんです。
…
〈棚上げは悪くない〉
尖閣の問題、あれを棚上げしたほうがいいという意見があります。私もそう思うんですけどね。…
棚上げしたら結局は将来に問題を先送りすることになるんじゃないかと反論する人がいる。…
30年もたてば、世界には国境がなくなるのじゃないかと。
…
〈「正義の戦争」が甦るとき〉
人類は、第二次世界大戦が終わったときに、あとのベトナム戦争、中東戦争、インド・パキスタン戦争
などなど、ともかく戦争に正義はない、「正義の戦争」は存在しない、ということを知った。…
ちょっと気になるのは、その戦争のルールが21世紀になってからまた大きく変わりつつあるのではないか
という点です。そのはじまりは1999年3月、NATOがコソボを爆撃しましたね。
あのときの理由が「人類のために」だった。つまり、ヒューマニズムを守るために武力攻撃をする、
という新しい戦争理論が主張されたのです。
〈「新しい戦争」を憂慮する〉
もしこの非国家的勢力側に核兵器や先端技術兵器が渡ったらどうなるのか、想像できない。
(注:「」〈〉赤字はこっちでしました)