カメキチの目
列車の窓から外に目を凝らす。
右を向いても左を向いても、原野。山。広大な畑(開墾地)。牧場。
木、木、木、…草、草、草…。たまに花、牛や馬、家いえ…あっ、人間。よくいえば素朴。わるくいえば単調。そんな風景がいいのです。
そうそう、きのう、道南のほうでは水田が目に入りました。「ゆめぴりか」とか「ななつぼし」かな?
北海道は「デッカイどうー」。ホントだ。
それを実感する。
釧路まで。
夕張山地を抜けた。十勝平野を通った。
初めてなので、日高の山々までは気にとめられなかった。
が、あの景色。あの空気。ぜったい飛行機では味わえない。
たまに町を通過し、停車する(特急なのであまり停まらない)。そのつど、獲物を狙うように花を求めてキョロキョロ花だけではありません。ときどき桜が咲いている。ユキヤナギ、レンギョウも今が見ごろなのだ。白い花びらをたくさんつけた樹も見える。チューリップもある。
言うまでもなく北海道は本州より寒いので、開花が遅い。頭ではわかっていることが、こうして自分の目で見ると、ほんとうに納得する。情報がウソとは思わない。ましてや誰にもわかる自然の情報である。でもそれは、あくまで「情報」なのだ。
「ヨドガワツツジ」というツツジを見た。沿線でも、釧路でも、根室でも。
本州にもあるらしいが、私たちは初めて見た。八重咲きで、見事というほかない。「きれい」より「美しい」という表現が似合っている。
その日の天気は曇り。
釧路に近づくにしたがい海も近づく。太平洋が見えてくるのだ。
海。波のうねり。割れた白波を見るのが嬉しい。
それはいいのだけど、その辺から、なんと、車窓からの風景がボンヤリしてきた。
聞いたことはあるけれど、海から霧が押し寄せる。海霧、濃霧におおわれてきたのだ。急に辺りが昼前なのに夕暮れてきたみたい。
やっと釧路に着いた。
街は隅々まで霧に包まれていた。ロンドンも霧のかもす雰囲気だけはこうなのだろうか。