カメキチの目
Q 日中、日韓の関係を修復する秘策はあるのでしょう
か?
A
外交、国防の政策決定権がない日本に関係修復力はない。
外交交渉というのは譲歩できるところは譲歩し、譲れないところは譲らないというかたちで、すり合わせていくしかありません。単純で時間のかかる作業ですけれども、それしかない。ただしそれができるためには条件があります。主権国家であるということです。
日本の場合は、外交、国防の政策決定権を日本政府が持っていない。アメリカにいちいちお伺いを立てないと、何も決められない。
アメリカとしては(アフガニスタン、北朝鮮、シリア、エジプトとあって 《注:2013年当時》)、これ以上東アジアで紛争が起こって、調停に出張るだけの政治的余力がもうありません。ですから、アメリカはいま中国と事を構える気はありません。尖閣諸島のうち2島は米軍が射撃場として借用しているにもかかわらず、領有権について曖昧にしているのはそのためです。アメリカは島を借りておきながら、誰から借りているのかについて明言を避けているのです。
日米はイーブン・パートナーではない。
尖閣で日中間の軍事衝突が起きた場合は、日本の国民は安保条約があるんだから、米軍は当然出てきて日本と一緒に戦ってくれるだろうと思っている。でも、悪いけど、アメリカは出てきませんよ。…ホワイトハウスの高官が繰り返し「尖閣列島は安保条約第5条の適用対象範囲内である」と明言しているのは事実です。でも、このコメントはせいぜい、「この地域は第5条を適用すべきかどうかを熟慮してよい対象である」という程度の意味しか持っていないと僕は思います。
アメリカにしてみれば、中国と戦争はしたくないけれど、戦争しないと日本を失う。苦しいダブルバインドなんです。だから、唯一の「落としどころ」は「日中関係は険悪だが、戦争までには至らない」というあたりなんです。そのへんに外交関係が落ち着くように、必死で手当している。
韓国は今でも軍隊の指揮権限である戦時作戦統制権はアメリカが持っているんです(米軍が撤去すると対北朝鮮の防衛に不安のある韓国が返還を求めていないのです)。つまり、韓国軍が日本に侵攻してくるとき、日本侵略部隊の指揮を執っているのは在韓米軍司令官なんです。…ということは、当然、それに先立って日米安保条約はすでに一方的に廃棄されているし、国内の米軍基地からも続々と米軍が国内を鎮圧するために出動済みだということです。
憲法解釈を変えて集団的自衛権を行使することを安倍内閣は願っているようですけれど、それは集団的自衛権というものについて勘違いしていると思います。集団的自衛権というのは、ハンガリー動乱とかプラハの春とかベトナム戦争とか、米ソ両大国が自分の「シマうち」で反ソ的、反米的な政権ができたときに傀儡政権を担いで、つぶしにかかるときの口実に使った理屈です。他人の喧嘩に割って入ろうというのだから、そんな権利は軍事大国しか使えません。
内田さんは、だいじなことをきちんと知り、知ったことに基づいて深く考え、考えたことを世間に伝えるのは自分の役目とばかり、平易な言葉で語りかける。
私はみんな、深くうなずいて読んだ。
内田さんや似たような人の考えばかり本を読んで、立場や考えなどが大きく異なる人の主張、説を「あんたは知ろうとしているか」という批判があろうかとは思うけれど、隠居老人でいくらヒマがあろうとも(ありません)ムダとは思わないが、あえて今から、安倍やトランプ、金正恩が好みそうな本を読もうとは思わない。人生は限りがある。私の残り時間は少ない。
安倍政権は、たくさん使えばほんとうにそう思っているかのように「謙虚」を言いまくり、こんどの選挙結果が弾みとなり、「謙虚」に本丸「憲法改正」を持ちだそうとしている。
おとといのニュースが、麻生副総理が「北朝鮮の(ミサイル)問題で、大勝した」という意味のことを言ったと伝えていました。おおかたの国民(私も)は「またか…」と憤りを越し呆れるほかありません。
彼はよく「本音」を出し、自民党関係者をハラハラさせますが、その点、「建前」ばかり述べる総理は総理の権威で相手を「忖度」させ、「本音」はみごとに隠す。見あげたものです(私は本気で感心する)。
これは本の別なところでだが(Q 本気で安倍政権は改憲を考えているんでしょうか? に答えて)内田さんは述べている。
自民党改憲草案の方向性はアメリカの建国理念そのものを否定している。
つまり、アメリカは本来「自由と民主」をいちばんに尊重する国。
そして、続けて述べる。
たぶん、これまでアメリカの要人たちも自民党改憲草案の中身を知らなかったと思うのです。せいぜい米軍と共同の軍事行動がしやすくなるように9条の縛りを解くのだろうくらいに思っていた。
これまでアメリカが世界各地に軍事介入してきたときの大義名分は「民主と人権」です。本音は単に自国の国益追求なのですけれども、それでも「民衆と人権のために」という大義名分を掲げるのを止めたことはありません。それだけがアメリカの「超法規的」な軍事行動を正当化できるからです。
だから、まことに不思議なことでありますが、最終的に護憲の最終ラインを形成するのはアメリカ政府と天皇陛下だということです。
アメリカは日本国憲法を、安倍首相の言うような「押しつけ」(押しつけたのはアメリカということになっている)憲法と思っているのだろうか。
いまの天皇陛下と美智子妃は、長いあいだ平和が続いているのは現憲法のおかげとたいそう気にいっておられるのではないか。
こんどトランプが来るらしい。政府としてはカッコウがつかないので天皇陛下に会ってほしい。
ですが、いまの天皇は内心あんなヤツとは会いとうはないと思われているのではないだろうか、と私は「忖度」でなく本気で思っています。だけど、憲法に定められた公人としての立場からいってムリな話。同情します。
トランプは大のゴルフ好き。安倍首相は(「大」とはいかないだろうけれど)歓迎し、ともに楽しむようだ。
ミサイルがいつ飛んでくるかわからないときに…という国民多数の不安には菅官房長官が「政府といたしましては、…」と言いわけに必死(あなたにも同情します)。