カメキチの目

2006年7月10日が運命の分かれ道、障害者に、同時に胃ガンで胃全摘出、なおかつしぶとく生きています

2024.8.9 『生きなおすのにもってこいの日』(前)

お名前だけは聞いたことのある田口ランディさんの本を読んでみた。

『生きなおすのにもってこいの日』 という。 

 

 

私は「生きなおす」にはあまりに歳をとり過ぎているので、自分のことを思うと

「死ぬのにもってこい」のほうがいい。

 

書かれていることは(死がテーマであっても)生きることを深く考えさせる話が多く

齢なんか勘定に入れずに読め、ウンウン…何度も深くうなずいた。

(印象に残った話は六つありました。一つの記事に二つ触れ、3回に分けて書きます)

 

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けして一般的ではないものの見方

被害者として生きるかどうかは、その人が自分で決めることで、

私はあまり誰が被害者で、誰が加害者かということに注意を向けないことにしたの。

シンプルに『この事件で亡くなられた方たち』そう思うことにしている。

人は必ず死ぬ。私もいつか死ぬ。

人間は帰属意識がとても強く、集団 の目的のために手段を選ばない。

多くの人間が常に何者かであろうとし、何者かであるために闘おうとする。

本能に善悪はない。群れでしか生きられない宿業に芽生える残虐性が、

世界中、あちこちに吹き出している。

 

うっかり自殺

「若い頃は軽薄だったから」年をとって経験を積まなければ理解できないこと

人生にはたくさんある。

あのときは、わからなかった。自分が被害者だと思っていた。わからないことが、

ほんとうにたくさんあるんだ。そのことだけはかろうじてわかってきた。

まだ精神的に未熟な子どもの自殺はうっかり自殺」が多い。

 

    


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けして一般的ではないものの見方

(被害者が亡くなるという悲しい事件《事故》のことで田口さんが友人と語り合ったときのこと)

 

タイトルに「一般的ではない」とあるのは、普通一般的多くの人は被害・

加害の二項対立的な見方をしがちで、害者を憎み被害者に同情する

小説やドラマには加害者のほうに同情する場合があるけど、現実には稀だという気がする)

 

しかし、田口さんは事件(事故)という事実はとても悲しく惨めなことだけど、

それは当事者たちにしかわからないことがあるので、当事者ではない第三者

私たちが、被害・加害ということに必要以上こだわることはやめ、とくに被害に

遭われた方をお気の毒、可哀想と必要以上に感情移入することなく、

ただシンプルに『この事件で亡くなられた方たち』と受けとめようとされる。

(「《加害者の》欲望を満たすため」という単純な理由による事件でなくとも、事故のような過失、

未必でも、被害者に感情移入すればシンプルに『この事件で亡くなられた方たち』」と受けとめる

ことは難しいけれど、著者のこういう見方に強く考えさせられた

 

後半の話には、すぐウクライナとロシア、パレスチナイスラエル、戦争、

民族など、いろいろなことが思われた。

人間の「本能に善悪はない。群れでしか生きられない宿業に芽生える残虐性」に

強く感じることがあった。

競争も本能の一つなのだろうか。動物の世界で自分の遺伝子を残そうと、オスがメスとの交尾を

めぐってオス同士で争うのを見ると、ため息が出る。

私は自分が争えば負けるオスになるだろうと思うからため息をつく《それもあるけど》のではなく、

前の記事での藤原新也さんのいうように、《生存競争を敢えて「罪」というならば》

この世に生を授かったすべての生き物は、罪を重ねずして生きて行くことはできない」)

 

   


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うっかり自殺〉の話を読んですぐに痛感したことは、若い人、とくに子どもは

自殺に限らずうっかりすることが多い(と思う)こと。

 

うっかりしても「うっかりしてたー」で終わればいいけど)

うっかりしていていたことにも気づかず、取り返しのつかない事態に陥ってしまう

ことがある。

 

うっかりすること、注意不足は大人にもあるけれど、圧倒的に子どもに多い。

遊びに夢中になっての飛びだし事故と、自殺はもちろん違うけれども、うっかりしていていたことでは

共通している。

子どもの自殺が大人のそれと決定的に違うのは、大人の場合は衝動的であれ計画的であれ、それなりの

長い自分の人生の上に立った行為であるのに対し、子どものそれは、決定的に違う。

子どもは本質的に、実際に、大人のようには長く生きていない。

長く生きていないから、「年をとって経験を積まなければ理解できないことが人生にはたくさんある

ということがわかってはいない。

わかるわけはない。わかるほど彼らは長く生きる経験を積んではいない)

 

 

 

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                          ちりとてちん

ふるふると ゆれるゼリーに 入れる匙  川崎展宏

 

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