『デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義』福田直子・著
という本を読み、とても強く感じるところがあった。
新書本でとても読みやすい。
「SNS揺れる民主主義」という番組をみることになった。
本に書いてあったようなことを映像でも感じることになった。
本は3年前の発行なので、テレビの出だしで世界に衝撃を与えたという
アメリカ国会議事堂への熱狂的なトランプ支持者の「襲撃」騒動は
まだ起きていなかったが、福田直子さんも「デジタルポピュリズム」
SNSが、3年後にこんな暴挙を引き起こすとは想像されなかっただろう。
(いや、されただろうか。
SNSはフェイクだろうと何だろうと、好きなこと書きたい放題、発信し放題。
もしツイッターがなかったら大統領になれなかったと自分でも認めているトランプ。
「ツイッター大統領」が直前の集会で熱狂的な支持者を前に、国会議事堂への侵入を
けしかけていなかったら、前代未聞の恥ずべき汚点をアメリカの歴史に残すことはなかった
トランプという凡庸な一個人であっても、ユダヤ人大虐殺を命令したヒトラーが
何か優れた能力がなくても弁舌のうまさでトップに立ったように、多数の民衆に熱狂的に
迎えられれば、権勢欲をくすぐられれば、人はやってしまうのだ、信じられないことを。
《日本でも、小泉首相とか橋下知事、そういうリーダーの煽るような政治、弁舌、態度、
パフォーマンスを大勢の人々が支持した。彼らはトランプ大統領ほど派手ではなかったが。
多数の民衆が自分の頭で考える、疑うことをしなくなれば、群衆心理というものは簡単に
「その場の雰囲気」「そのときの勢い」「すう勢」に乗ってしまう。
アメリカ議会への侵入も、「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」》)
書かれていることすべてが心に響いたのですが四つのことに絞ります。
(ここでは前と後の二回に分けて書きますが、できれば直接、本書をお読みください)
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① アルゴリズム
が、何であるかを私は詳しく説明できないが、極めて重要なIT技術であること
くらいはわかる。
アルゴリズムが「デジタル・ポピュリズム」と直接には関係なくても、
ネットにおける民主主義を考えるとき、避けられない。
【引用】「ネット上では「何を表示して何を見せないか」、アルゴリズムによる
「目に見えない動き」が絶え間なく作用している…
データブローカーという新しい産業が盛んになり、膨大なデジタル情報から
顧客リストをつくり上げている…
目新しさや利便性が先行するままに、個人データの大量流出とますます強まると思われる
企業の監視に、一体、どのように対応していけばよいのだろうか」
ネットにアクセスするたび(実感はなくても)「私」という個人のデータ、情報が
アクセス先に流れ(漏れ)出ているという。
「アクセス」といってもマウスをクリックし、あるネット画面を見るだけだ。
(必要とあらばキーボードをたたくときもある)
きわめて簡単、単純な動作・行為によって、「私」という人間のごく一部だが、
私が先手をうってアクセス先をダマそうとしない限り、どういう形であれ、
間違いなく自分の一部が相手に伝わっている。
アクセス先のIT企業は、ほんの僅かの個人情報、データでも積もれば膨大になり
「データブローカー」なる商売人に買ってもらえるわけだ。
(「データーブローカー」なる仕事、商売があることを、私は初めて知った)
今(だけではないか)の私については個人情報、データといってもつまらないもの
ばかりで(価値あるものがあれば逆にこっちが教えてほしい》「データブローカー」に
買ってもらえそうなものはないので、保護すべき個人情報は思いつかないが、
スマホ(=ネットというわけでもないのでしょうが)利用が多い人はそういうわけには
いかないと思う。
なのに、個人情報保護に対してあまりに無防備、危機意識がなさすぎる方が多い
と著者は注意を呼びかけていた。
すぐに何かの危険にさらされるというわけではなくても、ネットを利用する限り、
(IT企業側に悪意がなくても)公然と私はわが身をさらしているのだということを、
しっかり自覚してかなければならないことを痛切に感じた。
「グーグル」などでの検索、「LINE」などでの通信、「ユーチューブ」や
「ネットニュース」などの視聴、「ツイッター」などでのSNS、「アマゾン」
などでの買い物、「ウーバー」などでの食べもの配達、「メルカリ」などでの
不用品の売り買い、その他いろいろいっぱいネットを使う。
(世の中、すでにネットなしでは成り立たないかのようになってきた)
それらの利用はだいたい無料。
(登録さえすれば利用可というものが多い)
誰それがどういう目的でどのように使ったか?それらの情報が、みんな相手IT
企業には筒抜けだ。
そして、「タダほど高いものはない」となる。
(著者は、「タダ」だから利用しようかとなる危険を、強い調子で警告されていた。
集まったデータは多ければ多いほど利用価値が上がる。集積され膨大な量となる。
それらは「ビッグデータ」と呼ばれて特別な価値を持つようになり、私たちの知らないところで使われる
データ自体は「中立」でも、使い方によっては薬にも毒にもなる。
何のための「ビッグデータ」か?)
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② 選挙広告キャンペーン
著者・福田直子さんは、この本で、いまや世界中で多くの人が利用するように
なったインターネットが、当初の予想をはるかに超えた深刻な影響を人々、
社会に及ぼしているという。
ネットの利用は、①で述べたような個人情報が知らないうちに盗まれていても、
個人の生活、暮らしという面では、実務的なさまざまな快適・便利な生活を
趣味的な楽しさ・おもしろさをも与えてくれる。
うつ向き加減で小さな画面をのぞく。スマホの虜になったかのような人々を、
今はどこにいても目にする。
(スマホが登場してからネットは爆発的に身近になった。
いまじゃ行政までが、固定電話のようにあって当たり前、使えて当たり前のように扱い、
コロナ化の現在、非常に重要な情報まで、〇〇HPで報せていますのでそちらへアクセスしてください
という。
スマホ非所有者・使用が苦手な者を切り捨てる。おいてきぼりにする。
行政が弱者切り捨てを率先している。それがどういうことを意味しているのか?
公務、行政にたずさわる誰も気づかないのだろうか?ヘンだと感じないのだろうか?
そういう事実を私はヘン?だと思う)
「私」は個人だけでなく、社会人でもある。
社会人としての側面を思うとき、人と人とをつながらせ、縁を取り持ち、
絆を強めるSNS(やLINE)の働き、機能はとてつもなく大きい。
とくに政治、選挙に利用され、それが『デジタル・ポピュリズム』となって
世論を操作し、民主主義を危うくすることを、本を読んで痛切に感じた。
SNSは、過去には「アラブの春」のような民主主義を拡大したが、現在は
ツイッターなどで、直接、親しい友人からメールを受けとるように
「私」宛てに大統領トランプからの生のメッセージが届く。
(どうだ、スゴイだろ!トランプ大統領と私は友だちなんだぞ)
【引用】「ロシアからのサイバー作戦は、アメリカが対象であるだけではなく、民主主義への不信感を
あおるためにヨーロッパの国々もターゲットにしている…
トランプの選挙陣営は、…心を決めていない、迷っている有権者に注目した。…
トランプ大統領自身、「ツイッターという自分だけのメディアがなければ大統領になれなかった
だろう」とテレビのインタビューで語っているように、ソーシャルメディアが選挙におよぼした
影響力は大きかった。…
データサイエンティストたちは、テクノロジーが問題であるのではなく、
テクノロジーの暴走を防ぐ規制枠組みがないことが本当の問題であることを強調している。…
戦争でも現地の人々の心をとらえるため、現地人の心理を入念に調査し、広告とプロパガンダを
駆使した情報統制の作戦を練ることを専門とする。…
有権者が気がつく間もなく…、ソーシャルメディアという新型「メガフォン」によって、偽ニュースや
シェアの拡散速度と範囲が加速し、想像以上にひろまっていったようだ」
著者は、「選挙広告」だけではなく、戦争(内紛を含む)もそうして行われる
と述べる。
(ずっと前に読んだ本で、戦争に果たす広告とプロパガンダを、日本でいえば「電通」のような
広告専門の大企業が政府から委託を受け、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争で「悪者」セルビアを
つくりだしたことが書かれてあった。
日本だって、あの戦争でどれだけ国民は国にダマされ続けたことか…)
アメリカ政府が「広告企業」に大々的なキャンペーン情報をやらせなかったら、
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争、イラク戦争は防げたはずだと。