テレビでおなじみの池上彰さんの本を読んだ。
実際の語り口そのままを文字にした感じ。
とてもわかりやすかった。
『おとなの教養3-私たちはどんな未来を生きるのか?』

(グーグル画像より)
すぐ可能で有効な対策を具体的に示す格差の話、ベーシックインカムの話、
社会的共通資本の話は強く心を打った。
(今日は、①私たちが生きている時代、社会は? ②産業構造の大転換が起きている
次回に、③格差 ④ 格差が広がると経済は発展しない
最後に⑤ベーシックインカム ⑥ 社会的共通資本を書きます)
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① 私たちが生きている時代、社会は?
「私たちは…未来を現在の延長線上にあるものとしてイメージしてしまいがち…
過去の歴史を振り返り、大きな変化をもたらした予兆が何であったのかをと考えること(が大切)
その次の予兆を発見する力を養ってくれます」
② 産業構造の大転換が起きている
「(GAFAなどに象徴されるIT産業の繁栄が長く続けば)
世界は圧倒的な金持ちと多くの農奴たちに分かれ、中間層がいなくなる…
「中間層がいなくなる」ということは、これまでは大企業が多くの労働者を雇い、
彼ら(労働者たち)が同時に消費者となっていた(ことがなくなる)」

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① 私たちが生きている時代、社会は?
どこにでもいる日本人の私が、「こんなことが起こるとは…」と驚いたのは
1987年の国鉄解体、分割・民営化。
日本中をくまなくつないでいた鉄道が切られるという。
(職員、つまり労働者は公務員なのに利用者の迷惑を考えず、よくストライキをする、態度が横柄
サービスが悪いとの国民の非難・批判が大きい《と多くの国民が言う》という理由をつけた。
民間だったら「お客様は神さま」「お客様”ファースト”(当時は言ってないけど)なのにと」)
国民の多くは納得しないまま(というより知らない間に。
もちろん国はちゃんと「官報」に載せたと言うだろうけど、そんなもの誰が見るか?)、
国有財産(国民みんなの財産)が民間企業に格安で(高ければ誰も買わない)
払い下げられた。
(「JAPAN RAILWAY」 通称「JR」
ちなみに「JT」は「日本たばこ産業株式会社」。こっちも国有だった。
たばこ・塩の販売に税金をかけ、独占的に販売を行う国の特殊法人で「日本専売公社」といった。
その日本専売公社とともに、国鉄の2年前、1985年に民営化されたもう一つは「日本電信電話公社」
《こっちはNIPPONの「N」で現在は「NTT」》
ところで、2年の差について考えてみた。
労働組合の力が、鉄道の方がたばこ・塩、電信電話より強かったのだろう)
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この頃から「働き方改革」(過労死を防ぐために労働時間短縮や有休増・休暇新設などの
いまの改革ではない)が始まった。
マイペースで働いている身には安心・安定した「年功序列」という働き方は
崩れはじめ、働き方が自由なアルバイト、好きな時間だけ好きな時間帯に働く
というパート労働というのは以前から普通にあったけれど、
同じように働きながらも、その企業や会社の待遇の差、その身分に甘んじなければ
ならない「非正規」労働、そして「派遣」労働が一般化した。
ふり返れば、1980年代半ば前後のこれらの出来事は、
いまの日本社会のあり様の「予兆」だったに違いない。

オマケの話:
「国有」「国営」から「民間」への分割、移譲から40年も経った。
「新自由主義」という名の民間の営利任せ・カネ任せは格差のほったらかしを生んだ。
このままでいいのだろうか?
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鉄道(いまはたばこ、電信電話は別にして)。
鉄道は国民の足として移動(通勤・通学、通院・買い物など人自身の動きだけでなく、モノの運搬
などを含む)の基本的な手段として(たとえ自家用車などがあろうとも)果たす役割を考えると
決定的に大きい。
同じ日本国民でありながら、首都圏のような都市部と地方の「交通格差」があまりに大きい。
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「JR北海道」は営業努力をしても、札幌や函館、旭川など都市部、観光地の路線は別にして、
そういう中で、「JR東」は首都圏での収入が超潤沢。
で、その稼ぎを管轄内の地方に回せるし、現にそうしているようだ。
(旅で東日本に行くと、地方でも車両は快適、駅舎も整っている印象を私は強く持っている。
好印象はますます観光客を呼び、営業収入につながるという好循環を生み出している気がする)
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ところで鉄道は、人を運ぶのだから営業収入、「お金」より大事ないちばんは「安全」。
そのいちばん安全面で、私の利用する「JR西」は超大事故を起こしている。恐ろしい…。
史上最大の鉄道事故、2005年の福知山線脱線事故(107名死亡 562名負傷)。
1991年には滋賀県の「信楽高原鉄道」という小さな私鉄の信楽線の車両と、その信楽線に
直通運転で乗り入れていたJR西の車両とが正面衝突(42名死亡 614名負傷)。
「JR西」の場合は安全管理がないがしろになっていたからこんな(信じられない)悲劇の事故が
起きたけれど、事故を起こした運転士の「ヒューマンエラー」をカバーする(例えばスピードの
出し過ぎを制御する装置などの)客観的・物理的な制動システムが取り付けてあれば防げた。
「JR西」の場合はカネを惜しみ、制動・制御装置の存在を知っていても採用しなかったに違いないが
すべてのJRが設置費用を気にし、「費用対効果」という人命無視のバカな観念にとらわれないよう
おカネのあるところが苦労しているところに回せるよう、再び以前の国鉄のよう一つになってほしい
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「格差」のことで人間と動物について思った。
人間も個体として見れば動物のように「差」「違い」があり、それが「自然」なので「競争」は必然
と見る立場もあれば、人間には他の動物には見られない「知性」「理性」があり、それが「自然」
なので「協力」が必然と見る立場もある。
「地球温暖化」や「多様性の尊重」など自国の一銭の得にもならないどころか害悪だとし、
差別も認めるトランプが、単純な決めつけだけども前者。
「協力」、つまり力を合わせるために人間は社会を「国」を作る必要があったと考える後者は
社会・国の力で、放っておけば「競争」により大きくなるばかりの「格差」を、人為の力によって
貧困という経済問題だけではなく鉄道という交通面でも縮めよう、小さくしようとする。
民間の自由(実態は独占的)市場に任せるのがいちばん、国はなるべく黙っている「小さい政府」が
いちばんという新自由主義は、国民を決して幸福にはしない。

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② 産業構造の大転換が起きている
「「中間層がいなくなる」…、これまでは大企業が多くの労働者を雇い、
彼ら(労働者たち)が同時に消費者となっていた」
あたり前のような事実であっても、そのことへの問題意識を持たないと
気がつかない、ということを痛感した。
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AI時代の到来により労働者の働き場がなくなっていくのではと心配される。
(その一方ではそんなことない、仮にあるとしてもずっと先。そのときはAIや精巧なロボットが
人間の代わりに必要な労働にたずさわってくれ、人間は額に汗し、ストレスをためて働かなくていい
時代、社会が到来と、私は楽観する《それよりか、核戦争で人類絶滅の方が気になる》。
いまはバスや配送の運転手さん、介護者などの人手不足の方が深刻)
だが、ある程度、自由に使い消費できるおカネがないと「中間層」とはいわず、
運転手や介護の仕事などの従事者、労働者の収入の実態を見れば、
彼らを「中間層」と呼ぶわけにはいかない。
(「これまでは大企業が多くの労働者を雇い」ということは現代ではいえなくなった。
グローバルな現代では外国の企業との競争に勝つために、負けないためにと大型の合併が見られる
ようになった。コスト、賃金の安さを求めて多くの国内の主力企業が外に出て行き、
国内の「中間層」は減少していくばかり。つまり、消費・購買力は下がっていくばかり。
《アメリカの「中間層」保護をいちばんに掲げて大統領になったトランプ。
「中間層」保護ということだけを見れば、大勢の支持者の熱狂が納得できる)
高価なものは欲しくても財布と相談、手を出すにはためらう「中間層」。
値がとくに張らなければ3C(カラーテレビ、クーラー、自動車)も持てた
「高度経済成長期」。
「一億総中流」といういい方も実感できた。
「消費者社会」という言葉を何度も聞いたけれど、私たちは労働者として働く
という(広義の意味で)「生産者」でもあるから(それなりに立派な)「消費者」でも
あり得たわけだ。
(いまの私は働いていないのであまり「消費者」になっていない。
消費への欲望は若いころより格段に減り、お金を使うことが少なくなった。
《いまは旅がいちばんの消費》
《コロナ騒ぎのときは「GoToトラベル」を批判していたのに、自分が利用する段になると
「得した」気分になった。
そういう矛盾した、いい加減な、調子のいい自分を忘れてはいけない)

水底を 見た顔の 小鴨かな 内藤丈草