「懐古」。
歳をとれば、昔のできごとがなつかしく思いだされる。
過去は「悲」も「喜」もこもごもなのに、「悲」は薄められ浄化され、それさえ
なつかしい。
(耐えがたかった悲しみ、苦しみ、辛さを時の長い流れは水と同じように洗い流し、忘れさせてくれる
「昔はよかった」という大いなる「幸せな勘違い」は、そういうことをいっている気がする。
もしそうなら、「人生」はなんとうまくできていることか)
ーーーーー
たまには懐古という個人的なことだけではなく、「老いる」こと自体を思ったり
考えてみることもある。
(私の場合は身体の障害もあるので「これ以上フラフラしたり、歩けなくなったら…」と実際的に)
『ヒトはどうして老いるのか‐老化・寿命の科学』 田沼靖一
(グーグル画像)
という新書を読んだ。
一般の人むけに、「老い」という誰もが遭遇する人生現象を、科学的な面から
わかりやすく解き明かした、画期的なものだった。
① 唯一無二の存在として生きている自分
② 「老化」はなぜ起こるのか、「死」はなぜあるのか
③ 「老い」の意味
の三つに分けて書いてみます。
(きょうは①。②は次回。③は次々回)
ーーーーーーーーーー
① 唯一無二の存在として生きている自分
【引用】
「人間は一人ひとり、唯一無二の存在として限られた時間を生きています。…
つまりアイデンティティを成熟させることができるということです。
「老い」とは、このアイデンティティを追求し認識することではないでしょうか。
「自分とは何か」…そして、「死」によってそのアイデンティティが完結するのです。
…
「老いて死ぬ」宿命を科学の面から、しかも生命の源である遺伝子のレベルから理解し、
不二の自分を自覚することによってはじめて、心豊かな老いへの道が見えてくるのではないでしょうか。
そうすることによって、それは単なる「老い」や「死」ではなく、
人間に与えられたもっとも貴重な「贈り物」となるのです。
…
人生の終焉を静かに受け入れるためには、その宇宙的な時の流れを認識することが不可欠でしょう」
(注:赤太字はこちらでしました)
ーーーーー
じつは上の引用は、本の出だし、「はじめに」で書かれていた。
(本全体の基調です。私はここを読んで最後まで読み通そうと思いました。
それだけ、感動したということです。
引用文をよく読むと、「…」で三つの段落に分けたひと固まりの部分は、それぞれが私が分けて書こう
としている①.②.③に対応していることに後から気づきました。
上段の「唯一無二の存在として生きている自分」が①であり、中段が②の「老化」はなぜ起こるのか
「死」はなぜあるのかであり、下段が③の「老い」の意味にあたっていることを)
誰もが、唯一無二の存在としての自分を生きている自分である。
その誰もが「アイデンティティ」を持っている。
そして同時に、人間など生きものは「死」によってそれが完結する。
あたり前な事実。
そのことを意識して生きようが、生きまいが上記の事実は変わらない。
しかし、このような言葉に出あうとやっぱり心が震える。